カイ逅日和。
「黒い粉」を試したが、ボクの力は普段と変わらなかった。
そもそも能力が身体強化だからね、当然と言えば当然か。その後の体に特に異常はなし。
成分分析をした結果はというと、興味深いことがわかった。
黒い粉は魔法使いのケムリと構造が酷似している。しかしケムリを構成する一つ一つの物質が、通常のものより非常に小さい。顕微鏡で確認するときの倍率がまったく異なる。
この形を見た瞬間、点と点が繋がったというべきか。体が勝手に動いていた。
向かった先は、悪魔の土産など希少なものが入っている保管庫。
そこに行く方法は、まずボクの部屋のテレビのチャンネルを特定の波長に合わせる(暗証番号代わり)。
すると画面が暗くなるから、その中に入れば特定の場所に行ける。これは悪魔には見向きもされなかった発明品。彼らはこれがなくとも、どこにでも行けるからね、ドアで。
だからといって魔法使いに需要がない、というわけではない。
事前の知識として、魔法使いが“扉”で移動できる範囲について説明しておこう。
魔法界からホールは可能。また、ホールから魔法界へも。
しかし“扉”の移動でできないことがある。
それが同じ世界への移動。これができるのは悪魔の“扉”のみだ。
だからこそ車やホウキにバイクなど、魔法界にはホールと似たような移動手段がある。まぁ単純に、扉が作れない魔法使いが多い、ってのもあるけど。
そんでボクの発明したテレビ型『ワープポータル』は、魔法界での超省略移動を可能にしたもの。単にテレビにしたのは、入って出るときの姿がホラーで面白いから、と思ったからだ。
今は移動場所をあらかじめ設定しないといけず、設定数も数えるほどしかできない。改良中だ。
だがいずれは、思い浮かべるだけで目的地へ行けるようにしたい。
この発明品はグダって手の進みが遅いので、完成にはかなりかかるだろう。未完成の状態で世に出す気はない。
そして『ワープポータル』を通って、とっ散らかったそこから御目当ての物を探し、工房へ戻る。
取って来たのはかつてホールで採取した雨の入った試験管。それなりに時間が経ったが、中身に変化はない。
それを顕微鏡で確認し、イスの背もたれに体重をかけた。
「ほぼ、同じカタチねぇ……」
元々ホールの黒い雨は魔法使いのケムリのカスが入っている。
諸説あるが、ケムリのカスが混じっているのは、魔法界とホールの空が繋がっているから────という説が人間の間では有力。
しかし“扉”でボクらはホールに降り立つ以上、やはり両者の世界が別であると考えた方が、先ほど説明した移動できる範囲を考えても、辻褄が合う。
カスカベ博士はこの件に関して、「部分的同一世界説」を否定はせず、「別世界説」を踏まえた上で別の要因があるのではないか──? との、見方をしている。
実際ホールの成り立ちってわからない。
魔法界についても「ブルーナイト」ができたクソ長い説明になる理由はあるが、この世界がどのようにしてできあがったかについての記述はない。
ハルちゃんに聞いたこともあったが、首を傾げていた。全知全能の悪魔でさえわからないことってなったら、どうしようもねぇよ。
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