ハーメルン
Vtuber短編
勇気に救われて






「もういい加減出てきたら?毛布にくるまってても何にもならないわよ」


言われてわたしはモゾモゾと毛布から顔を出した。

声を出そうとしても、やっぱり出ない。
ストレスからとか言われたけど……わたしが弱いから仕方ない。


「アレについては私が報告して、部隊長は懲戒免職になったから大丈夫よ」


わたしの部屋に入ってきて話しかけてくるこの人は医療班の星科さん。
いつも戦闘に出ると無線から聞こえる声でもあるからオペレーターもしてるのはわかる。

今日も任務で失敗した。
失敗の扱いをされた。

宇宙生物の撃退でわたしだけが撃墜数が0だったから。勝手に0にされてるだけ。
わたしみたいな新人は被害担当だから。


『……』


声を出そうとしてもうまく出なくて、出したくなくて口何度も開けたり閉じたりした。
それがわかるのか星科さんは頭を撫でてくれた。


『っ……っ…!』


久しぶりに感じる人の優しい暖かさに涙が出てきて止まらない、声を出して泣きたいのにうまく出なくて苦しい。


「……よく頑張ったね。あの時、気づいてあげていたら、君も声が出なくなることもなかったのに。ごめんね」


違う、違うんです。
貴女は悪くない…わたしが悪いんだ。
わたしが弱いから、わたしの心が弱いから…!


「君の所属する隊だけど、他の隊員たちがあなたを助けてくれたのよ?隊長のパワハラだって全部受けて、必要もない囮役なんかもやって……君は誰よりも立派よ」


優しく撫でてくれる手の感触が心地よくて、つい貴女に甘えてしまう。
わたしは、助けられる価値があるの?貴女に立派と言われる様なことは何もしていない。


―「お前は操縦しか脳がないんだからな」―

―「お前に意見する権利はない、そんな要らない口は捨ててしまえ」―


ずっと言われて、言われ続けて、わたしに、みんなから助けてもらう価値なんて。


「自分の価値は自分が決めるんじゃなくて……相手からの評価。でも君の価値はアイツなんかが言うよりもずっと良いんだよ」

『……星科さん』


久しぶりに出した声は掠れてて、小さくて…それでも聞こえたのか彼女は笑った。


「そんな悲しい顔しないで。君は笑ってる時の顔は私は一番好きだなぁ」


そう言って星科さんはわたしの頭に置いていた手を離した。


「また何かあったら、私の処置室に来てください」


ベッドが少し軋む音がして、星科さんが離れていくのが見えた。
扉を開けようとした時、わたしは小さな声で呼んだ。


『星科さん……』

「なに?」

『……ありがとう、ございます』

「どういたしまして」


星科さんは笑ってそう言ってくれて、部屋から出て行った。


きっと、あの時わたしの操縦する機体のオペレーターが星科さんじゃなかった、わたしは本当に壊れていたかも。

罵声や陰口じゃない、優しい言葉が今のわたしに取っては良い薬なのかもしれない。

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