ハーメルン
PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White
消えない刻印




・・・・・・・・・・

シーアンで兄と別れて約2年が経過、
あれから舞白は、甘粛省周辺の紛争地を放浪し
様々な出会いや別れ、危険な場所を次々と転々としながら
何とか生き延びていた。

そして、ここ2日前ほどにたどり着いたのは、新疆ウイグル自治区。
圧倒的に他の場所に比べて、危険度は高く、
既にここ数日で命の危険を感じていた。

どうしても、この紛争地ではまだ女性の立場が圧倒的に弱い、
それを隠すためにも長い髪の毛を切り落とし、
うなじが見えるミニボブ姿に。
強靭な強さに、高めの身長に、男性と見られることは多いが
舞白は心の奥底でそう見られることを嫌っていた。

仕方の無いことだと言い聞かせるが、自分は女性。
まだ世界では女性は弱い立場だと知ると、悔しくて仕方なかった。

・・・・・・・・・・・




「……ん……」

あまりに疲れていたのか、いつの間にか瞼を閉じていた。
カウンターに突っ伏していたせいか、やけに首が痛い。
暖かい毛布がかけられていて、店内には既に客の姿はなく、
店主の姿もなかった。


傍らにメモが置かれている

"目を覚ましたら2階に来なさい"

恐らくあの強面の店主……テソンだろう。
あんなに見た目は怖いのに、臆病だった店主の姿を思い出し、
思わずクスクスと笑ってしまう。

親切に着ていた防寒具は 丁寧に乾されており、
テソンの人柄がうかがえた。


メモに書かれている通り、2階に繋がってるであろう扉を開け階段を上る。
登っていく度に暖かい空気が漂う。


「……お邪魔しまーす……」

そっと扉を開けて中へ入ると、
古びた暖炉の傍で寝転ぶテソンの姿。

キッチンには小鍋が置いてあり、
ウイグル料理のチョチュレの香りが漂っていた。

部屋の時計は、朝の4時半を指していた。
わざわざ起こす訳にも、と思い
そっと1階に戻ろうとすると
気配に気づいたテソンは、身を捩らせゆっくりと起き上がる。


「…起きたのか、マシロ…」

「すみません、毛布まで……
それに濡れてた防寒具も乾かしてくださって…」

大柄な男は、眠そうに体を伸ばすと優しく笑みを零す。
そして舞白へと近づくと、ポンポンと肩を叩く。


「いや〜、昨夜のあの動き!
よくアイツらを相手に闘ったもんだ、
アイツらは厄介な薬物の売人達でな?
昨夜もあの場所で密会があったみたいで、こっちとしてはハラハラしてた訳だよ……」

さっきまで寝ていたとは思えないほど、明るく話し始めるテソンに驚く舞白。
ゆらゆらと体を揺さぶられるとそのまま朝食を、と
テーブルへと促される。


「そんな豪華なものは出せないけど
残り物で申し訳ないけど、食べてくれ
昨日、アイツらを追い払ってくれた礼だ」

久しぶりに口にする温かい料理に、ホッとする舞白。
丁寧に合掌をして口に含む。
あまりの美味しさに表情が綻ぶ。

「……美味しい、とっても美味しいです」

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