CASE-1 売られた少年少女
皇暦2010年8月10日、世界唯一の超大国神聖ブリタニア帝国は日本と地下資源サクラダイトを巡って対立し宣戦布告、日本に侵攻した。日本はたった一度を除いて勝利らしい勝利を挙げることもできずに敗北、占領され、ブリタニアによって【エリア11】と呼称され支配されることとなった。日本人は【イレヴン】と蔑まれ、ブリタニアの総督により自由を奪われ抑圧される日々を迎えることとなる。この戦いにおいてブリタニアは【ナイトメアフレーム】と呼ばれる人型機動兵器を実践投入し、既存の陸上兵器を上回る性能を発揮、その力をもってブリタニアは今や世界の3分の1を支配下に収めていた。
皇歴2017年、浦城京介は17歳へなろうとする少年だった。7年前のブリタニアの侵攻が起こるまでは威厳ある日本国軍人だった父と、欧州に起源を持つユーロ・ブリタニアの没落貴族であった母の下、八つ上の年の離れた姉と共に何不自由なく生活していた。どちらかと言えば無鉄砲で反骨心の塊のような少年であったが、友人や下級生の面倒を良く見、横柄な上級生に対し真正面から食って掛かるその姿を慕う子供達が数多くいた。それでいてハーフであることが影響したのか端正な顔立ちと子供にしてはがっしりとした体格を持ち、将来は軍人として父の下で日本の為に戦うのも悪くないと考えるやや短絡的な思想も持ち合わせていた。
だがブリタニアの侵攻に際し日本は敗北し、父は抵抗運動の為に母と離縁、入隊したばかりだった姉と共に地下活動を行うようになる。しかし京介は、ブリタニアにより日本がエリア11として支配されるようになった後も、母の連れ子としてブリタニア人として生きていく為に母方の姓を持ってケイス・ユーラックとして生きていくことになっても、自分にも出来ることがあるとイレヴンが住む町に多数存在するレジスタンス組織への協力を行うようになっていった。それは京介がケイスとなり、15歳の誕生日を迎え、母がブリタニア本国から来た輸入業を営む男と再婚した頃から始まっていた。ブリタニアの総督府が存在するトウキョウ租界に敷地を構える私立アッシュフォード学園に転入し、租界の情報をレジスタンス組織へ流し、そのレジスタンス組織がブリタニア軍によって壊滅させられれば次の組織へと移り……といった日々を送るうちに、彼の行動はふとしたきっかけで不仲であった継父に知られてしまう。
アッシュフォード学園の高等部へと進学し1か月程経った後、京介はその学園の敷地内でブリタニア軍によって拘束された。レジスタンス組織への協力、国家反逆罪として死刑は免れない重罪だった。継父の通報によって全てが明るみに出たことを至った京介は、激しい無力感に苛まれながら、周囲からの侮蔑の視線を受けながら、兵士達に連行されていった。1年近く前の出来事で今でも彼の脳裏にこびりついているのは、野次馬と化した生徒達の中で一人物悲しそうな視線を送ってくる赤毛の少女の姿だけ。
連行された後の京介はただ銃殺刑を待つばかりだと思っていたが、一つだけ幸運だったと思えたのは日本を統治していたブリタニア軍の一部が腐敗していたことに他ならなかった。同時期に拘束されていた同年代の少年少女達と共にある日牢屋から連れ出され、京介はある貴族の下へ軍から売り飛ばされた。違法な手段で、公には死んだ人間にされたことで。その貴族は民間に卸されたKMFを使用したスポーツ興行を実施する裏で、違法なKMFによる地下闘技場を運営していた。現在でも軍で使用されている第4世代型KMF【グラスゴー】を用いた、選手の命に金銭を掛ける殺し合い。それに出場する選手として、少年少女達は買い叩かれていたのだ。勿論一部の少女達は闘技場での慰み者として買われたに過ぎず、嗜虐性を隠そうともしないスタッフ達に連れ出されたかと思えば、数日後には麻薬中毒で錯乱して戻ってくることなどザラだった。
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