ハーメルン
真の実力はギリギリまで隠しているべきだったかもしれない
聖人狩りに行こうよ ③
「いやー助かりましたー! 私、さすがに今回ばかりはダメかと思いましたよ。もう聖教会に捕まって生きる降魔殺戮兵器に改造されて私の人生、もうここから先聖教会のカッコイイ降魔殺戮兵器として使われることで終わっちゃうんだって……」
土石流を適当に破ァ! して乗り切り、改めて暫定聖人ちゃんの拘束を解いてみたら、開口一番にめちゃくちゃうるさくてポジティブな感じでちょっとげんなりした。
なんでカッコイイ降魔殺戮兵器になれる前提で話してるんだろう。そんなになりたいならほっといてやった方が良かったかな。
「あ、いえ。そんななりたいわけじゃないんですよ? ただほら……私見ての通り可愛いでしょう? だからなるとしてもそういうかっこいい感じの兵器になるかなーって。あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
細流
(
せせらぎ
)
リンです。リンちゃんでも可愛いリンちゃんでも好きにお呼びください」
「また濃いのが来たなぁ」
既に面倒くさそうな雰囲気を醸し出す推定聖人改め、リンはしかし多くの聖人の特徴である、先程ガブリエラが薬で再現していたのとは違う、本物の虹を瞳に閉じ込めたかのような美しい瞳をしている。
「とりあえず俺は
惟神
(
かむながら
)
ハバキだ。別にお前をどうこうするつもりは無くて、ただ保護というか、確保だけしとこうって感じだから安心してくれ」
「保護……あ、そうだ。助けてくれません?」
「今さっき助けたばかりだろ。これ以上何を助けるんだよ」
「いやーそうではなくてですねぇ。実はですねぇ……へへっ」
口に出すのが憚られるのか、ボソボソと聞こえづらい声でリンはボブカットの毛先を弄りながら目を逸らし、本当に聞こえるか聞こえないかギリギリの声で呟いた。
「私、聖人じゃないんですよねぇ……降魔七階どころか降魔なんて倒したことないですよ」
「は?」
「ひえっ! 待ってください! これには深い事情が……」
じゃあなんだってんだ。
俺は特に関係ないこの顔以外良いところがなさそうなハツネの完全下位互換みたいな女を、わざわざ聖教会の奴らに目をつけられてまで助けたのが全部無駄だったって言うんですか?
「実は私……幼い頃から本当に運が悪くて。あれは7歳の頃、ちょっと家の裏山に遊びに行った時のことでした」
「おい待て、話を聞くとは別に言ってないぞ」
「そしたら出ちゃったんですよね……降魔」
「やっぱ続けろ」
そんな降魔ってホイホイ出て良いものじゃなくない?
いや、受肉してない降魔なら割と出るとは聞いていたけれど、そんな子供が裏山で蛇にあっちゃったみたいな感覚で会っていいものではなくないか?
「そしたらそこを偶然、奇声を上げながら爆走する金色の光を纏った人間大の何かが突っ込んできて、降魔を一撃で倒したんです」
「奇声を上げながら爆走する金色の光を纏った人間大の何か?」
「奇声を上げながら爆走する金色の光を纏った人間大の何かですね」
「ちょっと目、見せてもらっていいか……ん、瞳孔に異常はねぇな」
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