【12】世界、策
「あまり良い状況ではないわね」
私がこれまでの経緯を語り終えると、隊長は一言そう呟いた。
ソミュアは荒野のド真ん中で停車させている。
運転のしっぱなしでバテてしまった少女は見張りついでにソミュアの上で涼み、ミカは車内でミッコの監視だ。
「確かに、この状態ではな……」
隊長の言葉には、私も同意見である。
最終目標は全員で元の世界へ帰ることだ。
しかしそのためには、問題が三つある。
一つ目、元の世界へ帰る方法がわからないこと。
二つ目、変わってしまったミッコと押田を元に戻す方法がわからないこと。
そして三つ目は、押田が人質として人型に捕らえられていることだ。
人質になっているとはいえ、押田もいつまで無事なのかはわからない。
まずは奴を救出してやるのが良いだろうが、ミカは足を怪我しているし、ミッコの監視役も必要だ。
二人をここへ放置しておくわけにもいかないし……どうにも身動きが取りづらい。
私がしかめ面をしていると、隊長がすっと立ち上がり、
「まずはできることから進めるしかないわね。この子たちを向こうの世界へ帰しましょうか」
けろっとした表情で宣う。
「……えぇ」
思わず声が漏れた。
「ん、え、隊長、そんなことできるのか」
「できるわ」
「いや『できるわ』って、そんな、簡単に言ってくれるが」
「今すぐしましょうか?」
「待て待て待て待て」
微笑む隊長の肩を掴む。
「こっちは押田と二人、あれこれ手を尽くしてどん詰まりだったんだ。そりゃあ驚くさ。え、ホントに帰れるのか?」
「もちろん」
隊長の目は澄んでいて、そこには一欠片の嘘も混じっていないようだった。
「~~~~~~~~っ」
思わず頭を抱えてしまう。
問題の一つ目が、あっけなく解決されてしまった。
いや、薄々、気付いてはいた。
この世界への扉は、隊長の実家の私有地にあったのだ。
隊長は全ての事情を知っているのではないか、この世界が何なのか知っているのではないか、と考えるのは道理だろう。
しかし、押田と二人、生きるか死ぬかの大冒険を繰り広げておいて、結局は隊長を待っているだけで良かったというのは、なかなか笑えない。
すぐさま飲み込めるものでもない。
……まぁ、過ぎたことは気にしないようにするしかないか。
「よし、わかった。隊長がホントに帰り方を知っているというのは、なんとか飲み込むことにする」
気合いを入れ直して、言葉を続ける。
「それじゃあまずは諸々の説明をしてくれ。私は全て話し終えた。次は隊長の番だろ」
「んー、説明、ね。といっても、何から始めたら良いのかしら」
「……では、こちらから質問をしようか」
その声は私のものではなかった。
ミカだ。いつの間にか私の背後に座っている。
隊長が「ええ、どうぞ」と促すと、彼女は言葉を続ける。
「この世界と、私たちの元いた世界との関係は?」
直後、「なになに何の話?」とアキも寄ってくる。
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