ハーメルン
念願叶って潰れそうで潰れない喫茶店を開いたらなんか百合ラブコメの舞台にされたんだが?
ワンマンアーミー
コンテンダーという銃がある。
単発式のシングルアクションの銃であり、何より特徴的なのは小口径のライフル銃で扱うようなサイズの弾丸を撃ち出す事が可能であるという点だろう。
当たり前だが、ライフル銃で扱うような弾丸にはそれを前方へと押し出すための火薬が大量に詰め込まれていて、だからこそ反動はとてつもなく大きい。
そうでなくてもその造形上かなり扱いが難しい銃であり、だからコンテンダーをただ強力な弾丸を撃ち出す事が可能な銃として実戦で扱うのはほぼ不可能である。
それを大前提として――向風学園『プライド』学科所属の少女、迎田茜が扱う銃は大口径の銃だった。
巨大な銃身にそれを支える持ち手とぶっちゃけこれ普通に鈍器としても使えるんじゃねって感じのオーダーメイドバレル。
彼女はその愛銃の事を『ブラスト』と呼んでいる。
それに関しては本人が付けたのではなく、作った人間がそう呼称していたのでそのままそれを利用しているだけだが。
一撃撃つだけで肩が持っていかれそうなほどの反動が発生する銃を、彼女は難なく扱える。
それは恐らく――彼女が人工的に作り出された天性の戦士であるが故だろう。
『アーカーシャ』プロジェクトでは薬物を用いたり、物理的な施術で人間の肉体を改造し、あるいは内側に『モノ』を埋め込む事もある。
とはいえ迎田茜は極めてナチュラルな肉体で、成人男性を大きく超える身体能力を誇っている。
それはもしかしたら怪物と取られるかもしれないものだった。
だから戦士としておおよそ年頃の女の子とは比較にならないような身体能力を持っている『プライド』学科の中でも、特に彼女は浮いている。
いや、本人が望んで浮いているのだろうか?
彼女は自身の特徴に対して自覚的であり、だからこそそんな自分がこの場所にいても良いのかと懐疑的であった。
だけど、だけどだ。
「……」
彼女の素は、あくまで年頃の女の子であり。
笑顔を浮かべて笑い合いたいと思っている事は、間違いないのだ。
だけど、出来ない。
笑えない。
笑ったら、人間との距離が縮まってしまうから。
そうしたら、自分がその人を傷つけてしまうかもしれないから。
だから、笑わない。
……そう言う意味で、何故自分はこの場所喫茶店『猫の夢』では笑えているのかについては、
(どうしてだろう……?)
分からなかった。
安心する場所である事は変わりない。
ここでは自分が力を振るう必要がなく、だから自然と笑えるのだろうか?
いやでも、無理に笑ったりはしない。
店長――岸波さんがいる時、必要最低限笑っている。
我ながら省エネな奴だなと思ったけど。
「うーん……」
学園の寮で悩む。
……悩んでも答えは出てくる事は、ない。
だからしばし悩んだのち、彼女は気分転換に寮の外に出る事にする。
散歩の時間だ。
気配を消して誰とも出会わないように足音を消し、こっそりと。
そして外に出て初めて「んー」と気を抜く。
さて、どこに行こうか。
と言っても、行くところは1か所しかないかもしれない。
「猫の夢」へだ。
そんな訳で行き先は決まり、そこへ向かって歩き出す彼女だったが。
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