ハーメルン
念願叶って潰れそうで潰れない喫茶店を開いたらなんか百合ラブコメの舞台にされたんだが?
二人のアルバイト
そんな訳で気づけば二人の美少女アルバイトが働くようになった訳だが。
「全然人、来ませんね」
恵美ちゃんがそう呟くように、いつも通りお店に人は来なかった。
閑古鳥がカーカー鳴いている。
俺としてはいつも通りなので別に何とも思わないのだが、しかし恵美ちゃん的にはやはり困惑と危機感を覚えたらしい。
「……大丈夫なんですか、これ。立地とか、悪いんでしょうか」
「立地に関しては、まあ、悪いみたいだな。穴場スポットになっているとも言う」
「ひ、人が来ないと不味いんじゃないですか売上げ的に」
「そうだなー。まあ、そこら辺は気にしなくても大丈夫、アルバイト代はちゃんと出せるから」
「一体どこから出てるんですかそれは……」
「不思議だよねー、本当に」
うんうんと頷いて見せる茜ちゃん。
「こんな売れない喫茶店なのに提供する料理は一級品だし、手を抜いていない。だからリピーターは確かにいるっちゃあいるけど、だけど常に来ている訳ではない、と」
「確かに料理は美味しいですよね。カルボナーラ、大好きです」
「カロリー爆弾だけどねー。ヘルシーなカルボナーラが食べたい」
「それはもはやカルボナーラじゃない。カルボナーラはカロリーをこれでもかってブチ込んでこそカルボナーラなのだよ、君達」
「……ヘルシーなスパゲティも献立に入れてください」
「映えるなら私は何でもいいかなー」
「……女性が好みそうなパスタに関しては、今後考えておくよ」
フルーツトマトとか使った冷製のスイーツスパとか、良いかもな。
爽やかな甘さがするスパゲティとか珍しいだろうし、色合いも綺麗だから『映え』る。
ただ、そうなるとやはりどこで仕入れるのかってのが問題になって来るだろう。
ちゃんと、持ってきてくれるだろうか。
からん、ころん。
と、そう思っているとタイミング良く、あるいは珍しく店の扉が開かれ客が入って来る。
「「いらっしゃいませ」」
「お、お~。話しに聞いた通り、可愛らしいアルバイトの子が入ったじゃないか、岸波」
「なんだお前か」
入って来たのは知り合いだった。
頭が若干可哀そうな事になっている男性、名前は左藤太郎。
偽名じゃないかと思われるかもしれないが、一応本名である。
「何しに来た」
「飯ぃ食いに来たんだよ。ここ、喫茶店だろうが」
「冷やかしじゃないなら、良い。いつも通り、ナポリタンで良いのか?」
「いや、たまにはカルボナーラ食いたいかなって」
「……デブるぞ?」
「運動すれば問題ないさ」
そう言う割に彼の腹は年相応に出てきている。
「まあ、俺は別に良いんだけどさ」
俺は厨房の方に引き籠り、それからパスタをゆで始める。
カルボナーラは結構簡単に作れるから好きだ。
茹でて、ベーコンを炒めて、卵や複数のチーズと絡めれば完成、それでおしまいなのだから。
滑らかな味わいにする為に日本人は生クリームを入れる場合が多いが、俺は基本的に入れない。
そっちの方が美味しい気がするからだ。
……肉の脂が透き通った飴色になったのを確認しつつ、それをボウルに投入。
くるっと絡め始めよう。
そして、そんな様子を恵美ちゃんがぼけーっと見ていた。
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