ハーメルン
古龍が去った後日談
パンドラ


昔。ロックラック。

記憶の中、栞のページ。
風通しの良い部屋でハンター日誌を一緒に読んだ日々が鮮明な色彩と共に蘇る。

「俺、両親居ないんだ。古龍に村を襲われた時、大人は誰も助けてくれなかったからさ。だから俺が古龍を倒せるハンターになって、古龍に襲われた村の人たちを助けるんだ」

自然の象徴たる古龍を狩るなんて、常識では考えられないと笑って本心を誤魔化した。
潮風で錆びた金具と砂上船。湿った石造りの道。
火竜の真似をして遊んだ数年間。

古龍種の狩猟許可はごく一部の優秀なハンターにしか降りない。手練れのハンターが手を組んでも、古龍種に勝つことは難しい。
人が古龍に挑むのは、死ににいくようなものだ。
最初のうちは無理だと笑っていたが、揺れない信念に魅せられて背中を追うようになっていた。

「俺もハンターになって、一緒に戦うよ」

村が滅ぼされてから、友達や仲間が出来た。
それでもあの日骸龍が心につけた傷痕が癒えることはなかった。
だけど、その言葉を聞いた時には生まれて初めて心の底から笑えた気がした。

数年後。

「そうか...ハンターにはなれなかったのか...」

「本当はお前と一緒にハンターをやりたかった」といった時のお前の辛そうな顔を忘れられない。
それは、足並みを揃えてハンターになれなかった自分への失望に見えた。

「それで、ギルドで働くことに決めたんだ。
ハンターズギルドの職員として、ハンターのサポートをしたい」

「勉強、忙しくなるんだろ」

目線を逸らして、微笑んで、頷いた。

「また会おう」

それが最後だった。

〜神域

次から次へと繰り出される無数の属性攻撃に消耗した様子の覇竜と崩竜。
その上に、瞬く幽冥の星が静止している。
体格で勝る覇竜と崩竜は地形を崩し天候を変える程の攻撃で煌黒龍に挑んだが、煌黒龍の機動力についていくことが出来ず、攻撃を当てられずに圧倒されていた。

神をも恐れさせる最強の古龍からの要望は一つ。
それはこれ以上この惑星を荒らさず、棲家に戻ること。
伝説の飛竜とはいえ、所詮は生物。
それが煌黒龍の勝因なら、煌黒龍とは一体何者なのか。火山の地下へ逃げ帰る覇竜と、雪山の地下へ逃げ帰る崩竜。
煌黒龍は慄いて退いていく巨神を睨み、そしてフォンロンの塔の方を見た。

そして、時空を切り裂く翼を広げて大空へと飛び立った。

〜塔の頂


「生命創造の禁忌を侵すことなく造られた現代のイコールドラゴンウェポンだよ」

凶々しく歪んだ殺気を放つその装備は火竜のものと酷似していた。
鎧が人を着ているかのような錯覚は、それが人の道から逸れた超常の力ということをありありと見せつけていた。

「ギルドマネージャーを頼んだ。これは我々ギルドの問題だ。こちらに任せてくれ」

ギルドナイトはそういうと身を屈めて大腿部に力を込めた。

「ほう。イビルジョーの力か。
かつてドラゴンウェポンを使って恐暴竜を討伐したギルドナイトが居たと聞いたが、君だったか」

恐暴竜の素材から作られた防具をバンギスシリーズという。
破壊衝動や飢えに襲われる代わりに、装着者の運動性能や耐衝撃性能を飛躍的に向上させる極上のパワードスーツだ。

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