ハーメルン
彼女いない歴29年のオレ氏、ゾンビの彼女ができまして……
3話・金髪美女の、ゾンビハンター


「早くそのでかいケツを、どけてくれって」

「ケン、あなたは、この逆さのハート形をしたキュートなヒップが好きじゃないの?」

 俺は胸の上にまたがり、艶めかしく尻を動かす金髪ロングの美女に向かって、拒絶を意味する簡単な中学英語で言った。

「ノー! アイドント」

「ホワ〜イ? なぜなの? これはあなたに見せたくてジムで鍛えた努力の結晶よ」

「ノー! アイドントライク、ビッグヒップ」

「日本人のガールのペタンコなお尻とは違うでしょう」

「こんなことをしておいて、よくそんな冗談言えるな。俺の大切なルリとカナを殺しておいて」

「なに言ってるの? ゾンビがこんな銃弾なんかで死ぬわけないじゃない。あの子たちは少しの間、眠っているだけ」

「そうなのか?」

「それより、どうしてケンはいつもワタシを怒らせるようなことばかりするの?」

「逆だろう? 困らせるのはそっちの方だ」

「ゾンビの味方をするケン、本当にイヤなやつ!」

 金髪ロングでグラマラスなスーパーの迷惑なクレーマー客だったクレアは、俺の首に腕を回して抱きついて言った。

 白人女性特有の強い石鹸のような香りと甘酸っぱい汗の匂いに頭がくらくらとする。

 俺が働いていたスーパーに1年前、突如、現れた外人モデル体型のクレアを見て、ほとんどの店員と男性客は息を飲んだ。

 Tシャツを引き裂かんばかりの巨乳に不釣り合いなぐらいに引き締まった腰、さらに逆ハート型のケツはとにかくでかくて男の情欲を誘うかのように歩くたびに左右に揺れた。

 品出しをする男性店員たちはその胸と尻を盗み見みし、女子店員たちに呆れられ、当のクレアは苦情承りカードに達筆な日本語で『失礼な店員をクビにして欲しい』と書いてきた。

 店長はそれに対して丁寧な詫び文を書き、ボードに掲示したが、効果はなかった。クレアが来店するたびに、店長を含めてその肉感的なボディーを見ずにいられない者はいなかった。

 本社にまでクレームの電話を入れたクレアの恐ろしさは、その体だけではない押しの強さだった。アメリカ政府関係者の娘であることを利用したのか、店長はほどなく地方に左遷させられて、代わりにやってきたのがミサさんだった。

「誠に申し訳ございません! クレア様に不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます」

 このスーパーに配属されたミサさんがまずしたことは、クレアが来店した時に店長室に案内し、丁寧に詫びた上で失礼を働いた店員の写真を見せ全員他店に配置転換すると約束したことだった。

 しかし、その結果、意外な結末が待っていた。なんと、俺以外の男性社員が全員配置転換させられてしまったのだ。

「どうして、あなただけ、許されたのかしらね」

「さあ、どうしてでしょうね。俺にはまったく心当たりはありません」

 俺は、ミサさんがクレアとの初対面後、店長室に呼ばれて今までの顛末を聞かれた。どう考えても、アタオカなクレーマーとしか思えない…。

「いえ、そうじゃないわ。きっと彼女には、なんらかの考えがあってそうしたのよ」

「そうですかね。では、僕は今日中に夏の素麺コーナーを作りたいので失礼しますね」


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