ハーメルン
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第九十七話 『並行とループ』 観察者A 不明 99:99:99+
◇
第十六話 『咆吼』 一樹守 冥府 5:40:39
地下に、サイレンが、鳴り響く。
百合が、両手を広げ。
「――さあ、守。ひとつになりましょう。これからあたしたちは、ずっといっしょにいられるの。守と、あたしと、お母さんと、いつまでも、いつまでも、いっしょに――」
妖艶な笑みと、邪悪な笑みで、一樹に近づいて来た。
☆
――同時刻。
☆
姉を追い、蒼ノ久集落から貝追崎へやってきた作家の三上脩と愛犬のツカサは、かつて日本軍が建造した要塞跡をあてもなくさまよっていた。二十九年前、漁師たちの襲撃から逃れた姉の加奈江と幼い三上。彼女たちを追ってここまで来たのだが、その後、まったく手がかりがつかめないのだ。新たな記憶はよみがえってこない。もしかしたら、貝追崎へ逃げたと思ったのは勘違いだったのだろうか? 三上は、そう思い始めていた。
☆
自衛官の永井頼人は、上官の三沢岳明と共に四鳴山の頂上を目指していた。山の頂上には巨大な鉄塔があるのだが、現在、その先端が雨雲の中に吸い込まれるようにして消えているのだ。あの鉄塔の先に何かある、と、三沢は言う。何の根拠もないことであり、ただの勘にすぎない。それでも、永井は三沢を信じることにした。この夜見島に上陸して以降、三沢は常に正しい行動をしている。彼について行けば間違いない。永井は、そう確信していたのだ。
☆
赤い津波が襲う前に夜見島を離れた警察官の藤田茂は、四キロほど離れた隣の島で夜が明けるのを待ち、日の出とともに三逗港への帰路へ就いていた。すでに上司には状況を報告してある。夜見島では全く繋がらなかった無線が、島を離れた途端高感度で繋がるようになったのだ。無断で行動したことをこっぴどく叱られたし、帰ったらまた叱られるだろうが、幸いクビは免れそうだ。明日からは真面目に勤務しよう。いつかまた、娘と暮らすことを夢見て。そう胸に誓っていた。
☆
崩谷地区を離れ、夜見島遊園へと向かった占い師の喜代田章子とその連れの阿部倉司は、途中で行き先を変え、島の北部にある貝追崎という地域へと向かっていた。理由は判らないが、章子が修得した新スキル・夜見島ガイドがそう指示したのだ。コロコロと行き先を変えることに文句を言う阿部を無視し、章子は貝追崎へと向かう。
☆
そして。
一樹守を追って夜見島遊園へやってきた一人の少女が、冥府への階段を駆け下りていた。この下に一樹の気配を感じている。そして、ひとつの邪悪な気配と、もうひとつ、大きな禍々しき気配も。一樹の身が危ない、早く助けなければ。そう思うが、階段の先は漆黒の闇に飲み込まれており、底はまだ見えない。一体どこまで続いているのか想像もつかなかった。このままでは間に合わないかもしれない――少女はそう感じていた。ここに来る途中、遊園地の門が閉ざされていたのが大きな痛手だった。内側から南京錠が掛けられており、それを開けるのにかなり手間取ってしまったのだ。門が開いてさえいれば……そう思わずにはいられなかった。
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