ハーメルン
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第九十八話 『神意』 観察者A 不明 99:99:99+
「――さっきもチラッと言いましたが、羽生蛇村にかけられた呪いの本質は『ループ』です。この呪いに関わってしまった人たちは、『神よりも上位の者』さんが定めた特定の行動をするまで、何度も同じ時間を繰り返すことになります」
夜見島土産の夜見鍋と夜見アケビでお茶をしながら、竹内多聞は引き続き安野依子の報告を聞いていた。二〇〇三年八月三日、羽生蛇村の異界に取り込まれた人たちは、本人たちは気付いていないが、何百何千とループを繰り返し、その果てに、八月五日二十三時の『須田恭也が神の首を落とす』という結末にたどり着いた。現状、これだけがループから抜け出す条件である。
「恭也君と美耶子ちゃんが出会ったり、高遠先生が灯篭に火を灯したり、宮田先生が宇理炎を入手したり、先生が工場の配電盤を壊したりといった行動は、すべて、恭也君が神様の首を落とすことへ繋がっているんです。逆に言えば、それらの行動が行われず、恭也君が神様の首を落とせなくなった場合に時間が戻ってしまう、ということになります。要するに、羽生蛇村の呪いは、『神よりも上位の者』さんが、三日間ひたすらリセマラしたものなんですね」
「では、なぜそこまでして、『神よりも上位の者』は神の首を落とすことにこだわるのだ?」
「ポイントは、ただ神様を倒すだけでなく、神様の首を落とすことにあるんです」
「どういうことだ?」
「はい。それを説明するためにちょっと話がそれますけど、先生は、『因果律』というものをご存知ですか?」
「『全ての事象には原因があり、原因無しには何も起こりえない』という哲学的考え方だ。例えば、とある天才の言葉に『ギョーザを食べたらギョーザクサくなった』というのがあるが、これは典型的な因果律を表したものだ。『ギョーザを食べた』という原因があるからこそ、『ギョーザクサくなった』という事象があるのだ」
「そうです。まあ簡単に言えば、『原因があるから結果がある』という、きわめて当たり前のことなんです」
「うむ」
「通常、原因は事象よりも前の時間にあります。今の先生の例で言えば、『ギョーザを食べた』という原因は、『ギョーザクサくなった』という事象よりも前の時間にあります。事象よりも後の時間に原因があったら、『ギョーザクサくなった』後に『ギョーザを食べた』になってしまいます。これは、明らかにおかしいです」
「当然ではないか」
「しかし、その明らかにおかしいこと――事象よりも後の時間に原因があるということが、羽生蛇村では、実際に起こってるんですよ」
「――――」
「例えば、恭也君が羽生蛇村を訪れるきっかけとなったのは、二〇〇三年の七月、インターネットの掲示板で、『××村三十三人殺し』のウワサに興味を持ったからです。しかし、このウワサが村に流れ始めたのは、二〇〇三年の八月以降。恭也君が、異界で屍人さんたちを虐殺したことがきっかけです。事象よりも後の時間に原因があるんです」
「…………」
「他にもあります。二〇〇三年八月二日深夜、村では神の花嫁である美耶子ちゃんを神様へ捧げる儀式が行われようとしていましたが、この儀式は美耶子ちゃんが事前に御神体である神様の首を壊していたことで失敗しました。しかし、八月四日の早朝、壊されたはずの首が届き、儀式の再開が可能になります。このとき届いた首は、二〇〇三年八月五日の夜、恭也君が焔薙で神様の首を斬り落とし、それを比沙子さんがうつぼ船で届けたものです。これも、事象よりも後の時間に原因があることになります」
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