第15話
◇月∇日
ドイツ軍は選択を間違えた。
この生き物だけは目覚めさせてはいけなかった。
ハッキリとアタシの中の生存本能がそう言っている。ロバートお祖父ちゃんを抱き起こし、ジョセフに逃げようと言うもふざけるばなりで、アタシの声に耳を傾けようとすらしない。
そして、なによりジョセフの蹴りをゴムのように受け流し、巨漢のジョセフを吹っ飛ばすパワー。アタシの力では到底叶わないだろう。だが、アタシは兄貴分を見捨てるほど怖がりじゃあない。
ロバートお祖父ちゃんの制止を振りきってサンタナの前に飛び出す。お祖母ちゃん、ママ、アタシに力を貸してほしい。
アタシの願いが通じたのか、この本が勝手に動いたのかは分からない。しかし、アタシの手がサンタナを壁にめり込むほど吹っ飛ばした。
この〈レヴィー・ブレイク〉は使える。気絶したふりを決め込んでいるジョセフを起こし、新たに出てきた『COIMC』をジョセフに見せる。
おそらくアタシの能力は『キャラクター』だ。さっきのパワーは偶然にも開いたページが『スーパーマン』だったおかげだ。
◇月Χ日
早朝、肩凝りや疲労を感じながらロバートお祖父ちゃんとジョセフに付き添ってローマへやって来た。なんでもドイツ軍のルドル・フォン・シュトロハイムの遺言だそうだ。
サンタナを外へ追いやったのは彼らだ。
アタシは『キャラクター』のパワーを利用して、ジョセフへの攻撃を防いでいただけに過ぎない。アタシの能力はお祖母ちゃんとは違う、ロバートお祖父ちゃん曰く性質も違うらしい。
お祖母ちゃんは『文章』の意味を他人へ与える能力、アタシは『キャラクター』のパワーを借りる能力、同じ〈レヴィー・ブレイク〉の持ち主だというのに似て非なる能力だ。
それに付け加えてアタシは先天的に波紋の呼吸を練れるほど頑丈な肉体と心臓をしていないのだ。ロバートお祖父ちゃんは練れるが、アタシには波紋の呼吸は遺伝していない。
確かに若さを保てるのは羨ましいが、アタシには〈レヴィー・ブレイク〉がある。あれもこれもと言うのは我が儘で、少し意地汚いように思える。
◇月₩日
アタシのスパゲッティーにワインをこぼすジョセフに苦言を吐こうかと思ったが、ロバートお祖父ちゃんの言っていた件の男とは彼のことらしい。
イタリアの男性はキザだと聞いていたが、まさかアタシを口説いてきたのは予想外だ。ジョセフはジョセフで妹分を口説いてじゃあねえと文句を言う。
アタシからすればどっちもどっちなんだが?と思いながら、無駄に口論が発展しそうなので黙っておこうと決めた。
途中からやって来たロバートお祖父ちゃんもアタシが口説かれたと知り、ジョセフと一緒にシーザー・A・ツェペリに抗議している。
べつに口説くぐらい良いんじゃないか。アタシは、そう簡単に靡くほど安くも軽くもないけど。なんならジョセフを口説けば良いじゃないか。
そいつ、アタシのドレスを着てたよ。
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