第16話(ジョセフ・ジョースター)
「アシュリー。アシュリー・スピードワゴン!」
俺の叫び声で正気を取り戻した妹分の両肩を掴み、刻一刻と迫るタイムリミットを考えながら、今ここでマルクを救えるのはお前しかいないと説明する。シーザーのやつも話は聞いているのか、アシュリーにマルクの存命を頼んでいる。
「ああもう、やる、やってやるわよ!」
コミック本より小さな、ちょうど持ち歩ける聖書のような「本」を素早く取り出し、パラパラと勝手に捲れるページが止まった瞬間、アシュリーの背後に金髪の美女が見えた。
そのまま美女がマルクへ手を翳す。
いや、違う。
これは心臓へ直接なにかを打ち込んでいる!奇怪だ!あまりにも奇怪な光景にじいさんもシーザーも動けていない。数秒後、マルクの失われた半身がモゴモゴと蠢き、腕と顔が生えてきた!
す、すげー、マジでやりやがった。ダメ元で頼んだとはいえ本当に生き返らせた。ふらりと姿勢を崩すアシュリーを受け止め、マルクをこんな目にあわせた柱の男を睨み付ける。
「ジョジョ、そこを退けぇーっ!」
シーザーの声に不覚にも従って横に下がってしまったが、両手を擦り合わせて波紋入りのシャボンを作り、華麗な攻撃を繰り出すアイツを見る。
即興でも即席でもいいんだ。
あいつのような必殺技を作らなくちゃあダメだ。いくら多彩な攻撃を仕掛けようと一人で三人を相手にするのは無謀だ。
「ジョ、ジョセフ、これを…」
「こ、こいつは!?」
苦しそうに胸を押さえるアシュリーが渡してきたクラッカー・ヴォレイを手に取る。おまえ、ちょいとおふざけで買った鉄球を、こんな真剣な空間で使えって言うのか!?
ちくしょーっ、やってやるよ!
クラッカーを振り回しながら顔を刻まれたシーザーの前に立つ。考えろ、あいつが策もなく俺に渡すとは思えん。あん?こいつは、ほほーん、にゃるほどぉ~っ、そういうことね。
「うおりゃあっ!」
俺の投げ放ったクラッカーは放物線を描き、ものの見事にワムウとかいうやつを通り越して、その後ろへ飛んで行ってしまう。
だが、しかし!そいつは想定済み。
「投擲と見せかけてのSPARC!」
「なに、これはァッ、ヌウゥ!?」
アシュリーの使った再生能力を持つ『キャラクター』は偶然にも雷を操れる能力を保有していた。ここは地下、それもローマの地下だ。闘技場で使われた刀剣は当然のこと何でもござれだ。
「いま、テメーの身体はクラッカーとアイツの放つ電磁波によって超強力な磁石になっている!つまりだ、ここにある機材もテメーにくっ付く!」
そう言って蹴り飛ばした照明がヤツの頭部を削る。よし、よおぉーっし、いいんじゃあないの、ここでこいつを倒せればぁ~っ!
「貴様に敬意を評し、奥義で殺す」
「はっ、そんな鉄屑にまみれて威張ったところで怖くもなんともないねぇ!」
自信と絶対的な誇り。
その二つを同時に傷つけたことを怒っている。そして、やつは機材や刀剣の破片で身動きの取れない、雁字搦めになっている。
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