第11話 ヴィラン連合
死柄木ら敵連合は佐藤が指定した廃倉庫に到着した。佐藤が自身の拠点ではなく他の場所を指定したのは、万が一ヒーローに勘付かれた場合の拠点バレを防ぐためだ。以前トゥワイスが来た時と今では、佐藤のヴィランとしての規模と知名度が違う。
死柄木が倉庫を覗くと、佐藤がすでにパイプ椅子に座っていた。いつもの帽子にミリタリーベスト。たすき掛けになっているアサルトライフル。佐藤の体が膨らんでみえるのはミリタリーベストに色々入れているからだろう。佐藤のパイプ椅子の後ろにはデカいバッグが置かれている。佐藤から二メートルほど離れた位置に同じようにパイプ椅子が置かれていた。
死柄木はそのパイプ椅子にドカッと座った。死柄木の他に来ていたヴィラン連合の面々が左右に立つ。トゥワイス、コンプレス、トガヒミコの三人である。コンプレスは黒マスクの上に白の仮面を被り、丈の長いトレンチコートと羽飾りのついたシルクハットを身に付けた男。トガヒミコは黄色い瞳に犬歯、明るい茶髪を両サイドでお団子の形にまとめていて、女子高生のような制服を着ている少女。
「まだパイプ椅子あるけど、使う?」
佐藤が問いかけた。ヴィラン連合の面々は顔を見合わせる。トゥワイスは佐藤に指を不機嫌そうに突きつけた。
「おい、俺たちはお前に何人で来るか伝えた筈だぜ! 人数分準備しとくのが普通だろ!」
「言われた人数通り来るかは分からなかったし、こういう場ではリーダーを立てて取り巻きは立ったままとかあるからね。必要な数だけ準備でいいかなって」
「取り巻きだぁ? 相変わらずムカつく野郎だ!」
「トゥワイス、静かにしろ」
死柄木が佐藤を見据えたまま、トゥワイスに言った。トゥワイスは腕組みしてそっぽを向く。
「椅子なんかどうでもいい。お前が刑務所を襲ったせいで刑務所の警備がこれから厳しくなる。俺たちはその償いをお前にさせるために来た」
「そっか。ごめんね、刑務所の警備厳しくしちゃって。でもやりたかったからさ、しょうがないよねぇ。で、その償いってのは何かな?」
「んなもん決まってる。俺たちが刑務所を襲う時に手伝え」
「いいよ」
佐藤は笑みを崩さず、気楽にオーケーサインをした。その気楽な返答に、死柄木たちの方が動揺した。そんな簡単に話が進むなんて想定していなかったのだ。
「君たちの話はそれで終わりでいいのかな? じゃあ、次はこっちの番。死柄木君……でよかったよね? キミの名前」
「……そうだ」
「なんでキミって頭や体に手をくっつけてるの? その手、本物? 『個性』と関係ある?」
「……は?」
死柄木の目が鋭さを増す。それは佐藤を初めて一個人として認識した瞬間であり、同時に心が溢れた瞬間でもあった。つまりは不機嫌になったのだ。
「関係ないだろ、お前には」
「うん、まあそうだね。大切な物なのかな?」
「……さぁな」
死柄木はなおも止まらない佐藤の質問に嫌気が差し、強引に話を切り上げた。
「ふぅん、別に大切じゃないんだ。なら、大丈夫かな」
「まだ手の話するのか?」
「いや、もういいよ。あと一つキミたちに言いたいことは──」
佐藤は瞬く間に拳銃を抜き、死柄木に向けて即撃った。死柄木の頭にあった手が銃弾で後ろに弾き飛んでいく。その手には赤い管のようなものが付け根部分についており、弾かれた衝撃でそれが途中で千切れた。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク