第5話 テスト
トゥワイスは不機嫌そうに通りを歩く。携帯電話を取り出し、義爛に電話。数コール後、相手が出た。
『ああ、どうだった? 佐藤は』
「どうもこうもねぇ! ヤツは不合格だ!」
『おやおや、随分荒れてんな。何があった?』
「話してて分かった。ヤツは居場所なんざどうでもいい。遊び場さえありゃいいんだ。ヤツがヴィラン連合に入ったらメリットどころか死柄木に悪影響を与える可能性がある」
『なるほど。嫌悪しつつも惹かれちまったか、佐藤の人間性に』
「はぁ!? んなわけねえだろ! ただただムカつくヤツだったぜ!」
『けど、自分じゃ考えられねえ思考をしてたんだろ? そういう自分にねえモンは嫌ってても惹かれちまうことがある。死柄木に会わせるのが危険だと判断したのがその証拠だ。死柄木が佐藤の思考に染まるかもしれねえと考えたんだろ? 居場所なんざどうでもよく、遊び場さえありゃいいってなったら困るもんな、お前は。で、その生粋の遊び人の佐藤は何で遊ぶって言ってたんだ?』
「……この国からヒーローを一人残らず消すってよ」
『……は?』
あの義爛が絶句し、二の句が継げなくなっている。それだけでトゥワイスはスカッとした気分になり、多少機嫌が良くなった。
『で、佐藤はどういう表情でその言葉を言った?』
「笑ってたよ、ずっと。へらへら笑いながら言いやがったんだ、その言葉を」
『笑顔……ね。トゥワイス、よく覚えときな。笑顔ってのは本来攻撃的な表情なんだぜ。獣が牙を剥く表情と似てるだろ?』
「佐藤は獣か。ちげえねえや」
『ヤベえことを笑顔で言うヤツにマトモなヤツはいねえ。ヴィラン連合に引き入れないまでも、友好関係は保っておくべきだと俺は思うね』
「……肝に銘じとくぜ」
トゥワイスは電話を切る。
確かに義爛の言うことも一理あると思った。佐藤が怖いとか、そんな理由ではない。佐藤のヒーローを全て消すという目的は、ヒーロー中心の社会を破壊し自分たちにとって都合の良い社会にするというヴィラン連合の目的と重なる。佐藤を利用するだけ利用すればいいじゃないか。トゥワイスはそう考えられるくらいには冷静になっていた。
トゥワイスはヴィラン連合の拠点に戻るため、歩き続ける。すでに陽は傾き、夕方に近付いていた。そんな時、トゥワイスはヴィランたちを襲うヴィラン集団を目撃したのだ。
燃える車の前に立つのは、クチバシを模したマスクを付けている黒髪の男。彼は死穢八斎會というグループの実質の頭領である。死穢八斎會は敵予備軍と呼ばれている、佐藤のいた日本でいうところのヤクザみたいなものだ。
「それだけのヴィランが集まって小さいコンビニのレジを盗むだけ……? 病気だよお前ら。病気は治さなきゃあ」
「金は頂いたんで、ヒーロー来る前にずらかりやしょーや、『オーバーホール』」
「病人ばっっかりだ……どいつもこいつも」
トゥワイスは直感で、こいつらは良い具合にイカれてると考えた。故に、トゥワイスは彼らの後を尾行し、目立たない場所に行ったら話をしてみて、手応えがあれば交渉することにした。
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