協力者 その②
協力者 その②
学期末の試験を1週間後に控えた週末。
Bクラスに昇格した承太郎たち元Cクラスの面々は中間テスト同様に平田、堀北、幸村たちを中心に大中小グループを形成して勉強会を開く形で対策を行なっている。
一つだけ違う点を挙げるとするならば、承太郎によって今回は過去問などの抜け道はおそらく用意されていないから死ぬ気で勉強しろとクラスに対してハッパをかけられている点だろう。
須藤を中心に赤点組は青ざめ堀北に教えを乞うている。
放課後を迎えると今日も今日とて生徒たちは各勉強会へと向かう。
「私たちもいくわよ」
須藤たちが揃って出ていくのを見た堀北が、綾小路に呼びかける。
綾小路は今回も赤点組の教師役だ。堀北と櫛田ではなく綾小路に教えられている沖谷はともかくとして、山内は不満を漏らしている。
本当に失礼なレベルの悪態のつき方に沖谷が気を使うほどだ。
「すまない。さっき茶柱先生に呼び出しをくらったんだ。先に行っておいてくれ」
「あなたまさか……」
「不祥事を起こした覚えはない。安心してくれとは言わないが、オレにもなんで呼び出されたのかさっぱりなんだ」
「そうね。あなたは誰かと事を構えるに至るコミュニケーション能力がなかったことを失念していたわ。ごめんなさい、もう3ヶ月もボッチをしていたのに」
「納得のされ方が納得いかないぞ? まぁとにかく、オレは遅れて参加か欠席だと思っておいてくれ」
「その分はどこかで挽回してもらうわ」
堀北は踵を返し、髪を靡かせ図書室へと向かった。
「さて、オレも行くか」
綾小路は本当に心当たりがなかった。
何かを質問するような事もなければ、誰かに関わったこともない。
あるとするならば、なんらかの目撃証言を持っている可能性に該当して呼び出されたとか、堀北のことを随分と気にしている兄が現状を探ろうと何か仕掛けてきたか。
それぐらいだろうと考えていた。
しかしそれは、昨日までのこと。
綾小路を呼び出した茶柱の様子を見て一つの可能性がよぎっていた。
来なければ退学にする。
そう脅されては行かざるをえない。
荷物をまとめた綾小路はスクールバックを担ぐと廊下で待つ茶柱に続く。
茶柱は綾小路がついてきているのを確認しながら職員室を通り過ぎる。
「一体どこへ行くんですか?」
「応接室だ。時に綾小路、お前は空条と仲は良かったか?」
「どうしてです?」
「いや、忘れてくれ。それより、お前の父上がいらっしゃっている。今は校長が対応しているが、お前が中に入れば私と共に退室する手筈だ」
「この学校はたとえ保護者でも訪れる事はないのではなかったですかね?」
「よほどのことがない限りはない。それがこの学校のルールだからだ。……しかし、綾小路お前が1番理解しているだろう」
茶柱先生は悔しげに唇の端を噛み締める。心なしか額にも汗を滲ませているように見えた。落ち着きがないどころか明らかに焦りが見える。それを見逃す綾小路ではない。
「引き返したらどうなりますかね」
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