無人島へ行こう その④
「これは使えるんじゃないか?」
「そうだな、持って帰るとしよう」
「しかもルアー付きか、経験者が居れば心強いが」
「問題ねえぜ、そこにいる綾小路が趣味でやっているらしいんでな」
「それは頼りになるな」
「……やれやれだな」
三宅たちの期待の眼差しを一身に受け、流れに身を任せる綾小路であった。
承太郎一向がスポット巡礼を行なっている裏側、探索班のひとつ三馬鹿班は森に入り、焚き火用の薪拾いをメインに活動していた。
「大量だぜ!」
須藤は手当たり次第に長短、大小関係なしに落ちている枝や木片を拾い、ジャージを巻いて作った薪入れに差し込んでいく。
「おーい健、そんな折れたばっかみたいな枝は水分多くて燃えにくいんだよ」
池は手頃な枝を拾い上げ折ってみせるとパキッと乾いた音を鳴らした。
「こういう乾いたの優先で探してくれー」
「まじかよ、詳しいな寛治」
「ちょっとキャンプ行ったことがあるぐらいで全然自慢できないけどな」
「いやいやすげぇって、頼りにさせてもらうぜ」
「お、おう」
照れ隠しに俯きながら薪を拾う池だが、そのペースは確実に上がった。
男とは得てして実に単純な生物なのである。
男三人和気藹々とだべりながら薪を拾い三人とも抱え切れないほどの薪が集まった。
「こんだけあれば充分なんじゃね?」
山内は額の汗を腕で拭う。
「んー、料理とかするならもっと要るかな。薪って太いの以外マジで秒で無くなるんだよ」
「何往復でもしてやるぜ!」
「すごい気合だな」
活力に溢れる須藤に2人は若干引くと同時に心強く感じた。
「往復するなら多少湿ったやつも持って帰って干せば使えるだろうし、良さげなのあったら持って帰ろうぜ」
三往復もする頃には時間も程よく過ぎており、4時30分を回ろうとしている。
圧倒的な体力を誇る須藤とキャンプに慣れている池は意気揚々と薪を拾ったり生っている果実を回収したりしている。山内は「明日は女子と班組みて〜」と何度も呪言のように呟きながら野山を練り歩いていた。
その帰り道、3人の視界に大木に背中を預けるようにして座り込んだ女子生徒が一人写り込んだ。他クラスの生徒だが始まったばかりの無人島試験、一人でいること自体が異様な光景で視線を引く。
女子生徒の方も三馬鹿に気づくと、一度視線をあげ来訪者を確認するが興味でも失せたかのように俯いた。特徴的な青がかったショートカット、三馬鹿は知らないことだがCクラスの伊吹だ。
送り込まれてきた際、同情をかい潜入しやすいようにするためか痛々しく頬を腫らしている。龍園かアルベルトに打たれたのだろう、かなり機嫌も悪そうだ。
「おい、あれ……」
誰が漏らしたのか声にすると「どうする?」と3人顔を見合わせた。
まだ声をかけるには距離がある。戸惑いがうまれ、誰も駆け寄ろうとはしていなかった。
「ほっとくのはやばいよな?」
「もし道に迷ってるとかなら確かにほっとくわけにもいかないよな」
「でもよ、なんか怪しくねーか? 普通こんなとこ独りでいるかよ、迷うったってガキじゃねえんだから」
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