細マ×ゴリマ×彫刻×事なかれ主義=誤算
side綾小路清隆
「おはよう山内!」
「おはよう池!」
登校すると満面かつ鼻の下を伸ばした卑猥な笑みを浮かべる二人が挨拶を交わしていた。
この二人、遅刻する事はないがこんなに早く登校する事はこの一週間なかったのに珍しいこともあるもんだ。
空条の弁論以降、私語や内職、遅刻をする生徒は居ない。とはいえ、池や山内、須藤辺りを筆頭にうつらうつらと居眠りしていたり机に突っ伏して寝ている姿はまばらに見受けられる。
生理現象には勝てないからな。
オレは許してやりたいが、隣人の堀北は射殺しそうに睨んでいた。
あいつ、オレが寝かけるとコンパスの針で刺してくるぐらいだ。本当に危害を加えそうで怖い。
「いやあー授業が楽しみで目が冴えちゃってさー」
「なはは。この学校は最高だよな、まさかこの時期から水泳があるなんてさ! 水泳って言ったら、女の子! 女の子といえばスク水だよな!」
確か水泳の授業は男女合同。つまり、堀北や櫛田、その他大勢の女子の水着……肌の露出を目にする事になる。
ただ、池と山内がはしゃぎすぎていて、会話を聞いてしまった一部の女子はドン引きしている。
しかしこれはチャンスとも取れる。
高校生男子にとって『女子』の話し、とくに『下ネタ』と呼ばれるジャンルは最強のコミュケーションツールだ。
これさえあればオレでも男子達と仲を深められるかもしれない。
何度か様子を伺い会話が途切れたタイミングで今しかないと立ち上がる。——が……
「おーい博士ー。ちょっと来てくれよー」
「フフッ、誰が呼んだかポセイドン。たんすに入れるはタンスに「な、博士! 女子の水着姿の記録は大丈夫なんだよな⁉︎」
「ぬ、口上を最後まで聞かぬとは……けぷこん。しかし、その点は任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」
「記録? 何させるつもりだよ」
輪の中にいた須藤が突っ込んだ。
空条との一件の後、孤立するかに思われた須藤だったが、池のコミュケーション力が幸いしグループの一員となっている。
そのグループは池、山内、須藤から成り、休み時間のはしゃぎ方や私生活から『三馬鹿』などと呼ばれるが……
「博士にクラスの女子のおっぱい大きい子ランキングを作ってもらうんだよ。あわよくば携帯で撮影とかもな!」
「……おいおい」
須藤も池の狙いに引いていた。
「哀れね」
「……お前も来てたのか、堀北」
「品性に欠ける会話に心奪われ気づいていなかったのね」
「……聞こえてたのか?」
「あなたより机ひとつ分彼らに近いのに聞こえていないはずがないでしょう」
「それもそうか……」
「でも、本当に哀れねあなた。大事な大事なお友達を作る機会よりも保身に走る様では一生ぼっちね」
痛いとこを突いてくるな。
しかし、前方からまるで汚物でも見る様な視線を向けている篠原達を目にしてしまっては積極的に近づこうとは思えない。
「オレは事なかれ主義なんだよ」
心無い堀北からの口撃を受け、池達を眺めながら耐え凌いでいると博士こと外村が慌てて池達に話し始めた。
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