1話
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2118年 7月
公安局刑事課一係 監視官
霜月美佳の姿は、とある人物の家の外にあった。
7月と言えど、朝から暑く
早く室内に入れろと言わんばかりにチャイムを押す。
「……舞白、早く開けなさいよ…」
マンションの入口のオートロックはすぐ解除された癖に、何故か室内に入れないという状況。
イライラと脚を揺らしながら、スイッチに手をかけていた。
3回目のチャイム音で、やっとドアのロック音が聞こえる。
ガチャ、っと開いた扉の先には、まだ寝巻き姿の人物が現れる。
「いらっしゃい、美佳ちゃん…」
現れたのは、外務省調整局行動課 特別捜査官、
そして現在は、有期限で公安局刑事課の監視官を務めている。
狡噛舞白
化粧はしている様子、しかし服装といい髪型は、まだ起きたばかりのような状態だった。
「…なんであんた…まだ寝巻きな訳?髪の毛もボサボサじゃない?朝の10時にって言ったのはあんたよね!?」
時計は朝10時を表示していた。
へへへっ、と呑気に笑みを浮かべる舞白。
「だって、まだ出発はしないでしょ?」
相変わらずの呑気さに、いきなり朝から深いため息を漏らす。
「とりあえず!準備するから、家でゆっくりしててよ?」
グイッと腕を引かれれば、室内へと招かれる。
霜月が家に訪れるのは3度目。
なんだかんだ、2人で時間を合わせては会っている仲だった。
「お邪魔します…って
…あんたエアコン着けてないの?」
「え?だってまだ朝だし…、窓開けてるだけでも涼しいでしょ?」
確かに涼しい風は室内に入ってはいるものの、モヤっとした空気に霜月は耐えられず、窓を閉め、問答無用でエアコンのスイッチを入れる。
「あんた本当にいつの時代の人よ?
体調だって崩しやすい癖に、こんなことで我慢することないでしょ?」
「だって暑くないんだもん」
「暑く感じなくても、体は正直なものよ。
…ていうか、早く準備してもらってもいい?
車、路駐してるんだけど」
呑気にソファに座り、へへへっと笑みを浮かべる舞白に、いつものように指を指す。
「ほらほら、さっさとする!早く着替えてきなさい」
「はーい……。
…あ、適当に飲み物とか出していいからね?」
そう口にすると、舞白は部屋へと消えていく。
やっと動き出した…、なんて考えつつ、ふとリビングのテーブルに目を向ける。
何やら、外務省の極秘案件の書類やら、趣味の大量の本が積み重なっていた。
「…こんな書類を放置するんじゃないの、全く…」
トントントンと書類を纏め、中を見ないように整理する。
リビングに置かれた大きな本棚。
兄が中学校入学時に購入してくれた大切な物だと、初めて家に訪れた時に話していた。
以前より、更に本が増えたと感じ、"博覧強記"の人。
そんな舞白を造り上げた本達を、霜月はじっと眺める。
「刑事室のデスクにも本はあるし、あの子の頭の中、どうなってるのホントに…。」
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