1話
電子書籍ではなく、いつも紙の本を持ち歩いていた舞白。
休憩の時も、隙あらばいつも本を読んでいる姿をいつも見ていた。
「"本の虫"、一番この言葉が似合うわ。」
両手を腰に当てれば、呆れ笑いを浮かべる。
そして、不意に傍らの棚に並べられている写真に目を向ける。
兄や宜野座との幼い頃の写真。
今の今まで、あまり過去の話は詳しく聞かなかったものの、今日こそ色々聞いてみようかな、なんて頭のなかで考えていた。
舞白の事は、アーカイブ保管庫で少し覗き見はした事がある。しかし、今まで聞く勇気、そして知る勇気が無かったのだ。
「((…狡噛慎也も、妹相手だとこんな表情するのね))」
"あの"姿からは想像がつかないほど、どうやら妹を溺愛しているらしい。それはこの写真を見れば一目瞭然だった。
いつもは舞白とこのリビングにいる為、まじまじ見ることは出来なかった。いくつもの写真に、舞白の周りの人間たちとの関係性がハッキリわかるような写真が多々見受けられた。
「((これは…、宜野座さん。
これだけツーショット…))」
自宅で撮られた写真のようだった。
宜野座と舞白の見た目を見る限り、恐らくは監視官になりたての宜野座とまだまだ子供らしさが残る舞白。
インカメで収められているツーショット写真からは、2人の昔からの関係性が見て取れた。
「本当に、仲がいいのね」
そう呟くと、背後から覗き込まれる霜月。
「でしょ?この時の宜野座さん、今と全然ちが…」
「ビックリさせないでよ!!」
全く気配を感じなかった霜月は、ヒッ!と声を上げて、かなり驚いた様子だった。
現れた舞白はニコニコと満面の笑みを浮かべて、横並びになって一緒に写真を眺める。
「これは、お兄ちゃんと3人で海で遊んだ時の写真ね。
こっちは…ほら、殉職しちゃったんだけど、監視官の青柳さん。」
「…知ってるわよ、少しだけ一緒に働いてたから」
青柳の写真を見ると、正直霜月は複雑だった。
きっと、舞白はなぜ殉職したかなんて知らないはず。
「美佳ちゃん、そんなに写真気になってたなら遠慮せずとも見てよかったのに…」
「べ、別に!そういう訳じゃないわよ。たまたま目に付いただけ…。
それと、舞白。あんた重要書類をこんな所に放置するんじゃないわよ?」
テーブルを指さすと、綺麗にまとめられた書類たち。
それを目にした舞白は、両手で顔を覆って、ため息を漏らす。
「…そうだよね…
昨日放置したまま突っ伏しちゃって…そのままにしちゃってた…」
「まさか当直明けで、そのまま外務省の仕事にも手をつけてたの?」
覆っていた手を離すと、その手を腰に当て、ふーーっと息をつく。
「なかなか、両立って難しいよね…」
「…いや、普通できないから、そんな器用なこと…」
公安局刑事課の監視官として身を置いてはいるものの、本業は外務省の仕事。容赦なく、伝達事項や極秘情報はいつも送られてきているらしい。
そんなこんなで話し込んでいると、時間は過ぎていく。
今日は初めての2人揃っての丸一日休み。
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