2話
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「よかった、警備ドローンに車差し止められてなくて…」
舞白の低層マンションの脇に停められた1台の車。
思ったより長く停めていた為、差し止められたらどうしようかと、内心ヒヤヒヤしていた。
「言ってくれれば、お兄ちゃんのところ空いてたから使えばよかったのに」
「…まさか、舞白があんな状態で出てくるなんて思ってなかったからよ…」
車のエンジンをかけ、少し涼しくなるのを待とうと、2人で車に寄りかかる。
ふと、霜月は舞白の容姿を横目で見る。
いつもはパンツスーツで私服はあまり見なれていなかった。
シンプルな白いTシャツ、細いスキニージーンズに、白いスニーカー。
ボーイッシュな黒いキャップを被り、首には珍しくネックレスを巻いていた。赤いハートが付いた…
「舞白って、あんなによく食べるのに細いわね…」
丈が短いTシャツからは、腹筋が割れた細い腹部が露になる。
しかしよく見ると、手術痕があることに気づく。
「確かによく食べるけど、その分動いてるし。
出勤した時は、大体スパーリングロボでトレーニングもしてるんだよ?これでも」
「相変わらずストイック…
…それにその傷…」
腹部の手術痕、それは過去に泉宮寺豊久と対峙した時に傷ついたものだった。傷跡は薄くはなっているものの、痛々しく感じる。
「私、気づいたら色んなところに傷が出来てるんだよね。
…ほら、新疆ウイグルの時の傷もあるし。私昔っからよく怪我をする子なんだよね…」
特に深刻そうでもなく、むしろ呑気に振る舞うその姿に、若干哀しさも感じる。
あくまでも舞白は女の子だ。多少は傷ついている面もあるはずだと、霜月は考えていた。
「そろそろ冷えたんじゃないかな?」
「…ぁ…、うん、そうね?」
2人は車に乗り込み、ササッと舞白が行き先を設定するために、助手席からナビが表示されたモニターに手を伸ばす。
行き先をどことも言わずに住所を打ち込む。
今日の行先は、舞白がどうしても行きたい場所だとずっと口にしていた。
しかし、着くまで秘密らしい。
「ねぇ。ちなみにその場所って、どこで知ったの?」
商業施設なのか、水族館や動物園なのか、はたまた遊園地なのか。
一切場所のヒントを明かさない舞白に疑問を持つ。
舞白は行き先を設定し終わると、その問いかけに答えた。
「雑賀譲二さん…、覚えてる?
確か聞く話によると、少しだけ刑事課の分析官を務めてたんだよね?」
まさかの人物の名前に、霜月は驚きの表情を向ける。
雑賀譲二…、霜月が苦手としていた人物…。
「雑賀先生がね、凄くいいところだよって教えてくれたの。
だからどうしても行きたくて…」
「待ちなさい、そこは何も害はない場所?安全?」
「…美佳ちゃん。雑賀先生をなんだと思ってるの?」
あまりにも否定的な雰囲気を持つ霜月を、細い目でジーッと見つめる。どうやら信頼はしていないらしい。
「だって、怖すぎるでしょ?あの人が言う、いい所って…」
「大丈夫大丈夫!私も行ったことは無いけど、絶対いい所だから!」
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