未来の示す可能性
仄かに光を放つ白い扉。
花園の最奥に作られた転送門、そこではこれから出動したり、討伐から帰ってきた魔法少女達が忙しなく行き交っていた。
天井を飾る大きなステンドグラスから陽の光が降り注ぎ、少女達の着る色とりどりのドレスを淡く彩る。
幻想的な、しかし魔法少女としては見飽きた日常の風景だ。
そんな中私は自分の商売道具を抱えてヨタヨタと歩いていた。
大荷物を抱えた私を幾人かの魔法少女が不審な目で見つめている。
でも、彼女たちは自身の契約精霊に耳打ちされ、疑問符を浮かべながらも私を視界から外した。
好奇の視線は気にせず、目をつけていた部屋の隅まで移動する。
ちょうど陰になる位置で、いい感じに薄暗い、そこで商売道具を広げる。
折りたたみ式の机と椅子一式。
組み立てた机にはエキゾチックな柄のテーブルクロスをかけて……椅子にはお尻が痛くならないようにお気に入りのクッションを置く。
そしたら、コスチュームの上から黒いケープを羽織り、目元を隠すように黒いレースの布を被る。
私の魔法少女コスチュームは鮮やかなオレンジだ。
悪くはないけど、ちょっと色が鮮やかすぎるのが悩みどころ……もう少し怪しげな雰囲気を出したい。
これで少しは印象が変わるだろう。
最後に小さな看板を机の上に立てたら準備完了だ。
『魔法少女占い』
小さな看板に内蔵された電球が怪しく瞬き、看板の文字を彩る。
私は占い師、そう、魔法少女専門の占い師なのだ。
各地の花園を渡り歩いてこうやって魔法少女が集まる門の近くで占い屋を開店している。
「もし、そこのお方」
あくびを噛み殺しながらゆっくりと歩いていた魔法少女へと話しかける。
いかにも仕事帰りといった雰囲気の少女だ。
出撃へと急いでいる魔法少女を邪魔してはいけない。
狙うのは、出撃後の帰還中の魔法少女だ。
それならば少しくらい彼女たちの時間をとってもかまわないだろう。
「少し未来を覗いては見ませんか?」
そうして、私は営業を始めた……
―――――――――――――――――――――
「カメリアお願い!」
リリィの声に応え、私は金魚たちを展開する。
住宅街で蜷局を巻く黒い災害、蛇型の深獣へと狙いを定めた。
前衛をリリィ、中衛はハイドランシア、後衛は私、いつもの布陣だ。
展開した何十もの金魚たちを深獣へと殺到させ、その障壁を啄み無力化していく。
「障壁剥がしたよ」
「よし!とっどめー!」
ホワイトリリィが討伐対象である蛇型の深獣へと躍りかかる。
このまま彼女の持つ純白の槍を突き立てれば勝負は決まる。
でも…………
「あぅっ!」
蛇の尾が振るわれ、白百合の魔法少女は地面へと叩きつけられてしまった。
しまった、金魚をちょっと大量に展開しすぎてしまった。
蛇の周りに浮かんだ大量の金魚がリリィの視界を塞いでしまっていた。
私のミスによって作られたその死角からの攻撃、リリィには防ぎようがない。
蛇は大口を開けて地面に横たわるリリィへと迫る。
やばい、追撃からリリィを守らないと。
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