ハーメルン
ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか
12.5星:クラスメイトside 失意と決意【下弦】
「雫ちゃん!!!お願い!!!開けて!!!」
私は、扉を何度も叩き、声をかける
彼女が弓人くんに向ける感情は知っていた。
私が、ハジメくんに対してそうだったように。
だから、あの時の絶望は痛いほどわかる。
今、彼女に必要なのは、側にいてあげることだ。
暫くすると、ゆっくりと扉が開く。
そこには、幽鬼のような顔をした雫ちゃんがいた。
「雫ちゃん!」
「香織...大丈夫なの...?」
「それはこっちの台詞だよ!」
今の雫ちゃんは、お世辞にも大丈夫とは言えない。
涙を流しすぎて、赤く腫れた瞼
ろくに寝てないのか、目の周りにある黒い隈
手入れをしていないせいで、ぼさぼさになった髪
自分に嫌気がさす
親友がこうなるまで、呑気に寝てたことに
「鈴ちゃんから聞いたよ...帰ってからご飯も食べてないって」
「もう...ほっといてよ...」
「いやだ!ほっとかない!」
「なんでよ...」
「だって!親友だから!親友がこんなになってるのを...ほっとけるわけない!」
「香織...」
互いに、涙が止まらない
私が今から言うことは、彼女には酷だろう。
けれど、私は口を開く
「ハジメくんと、弓人くんは落ちたんだよね...」
「っ!......えぇ」
彼女の体が震える
そして絞り出すように声を出す
「あの時...南雲くんに誰かの魔法が当たって...それで.....弓人は南雲くんを助けようとして......うぅ....ゆみとぉ....」
「私、諦めないよ」
「え...」
「ハジメくんと弓人くんは死んでない」
「けど...香織も見たでしょ...あんな高さから落ちたら...」
「それでも、2人は生きてる」
「なんでそんなことがわかるのよ......」
「勘」
「か...勘?」
「うん、何の根拠もない...ただの勘」
ー なんで...
ー なんでって...勘
ー 勘...?
ー そっ、『なんかすげーつまんなそーにやってんなー』って思って
「今の私には、助けに行ける力なんてない...だから!力を貸してください!」
「無理よ...私は弱いもの...」
「私も弱いよ!だから一緒に強くなろう!」
「もう...私は立ち上がれない...」
「立ち上がれないなら!私が支える!」
「迷惑だってかけるわ...」
「迷惑だなんて欠片も感じないよ!」
「っ!」
ー でも...迷惑じゃあ...
ー そんなの迷惑だなんて欠片も感じねぇよ、香織にも聞いてみな?同じこと言うからよ。
「香織...」
「だから!力を貸して雫ちゃん!」
「私は...私は!弓人に会いたい!会って好きだって言いたい!」
「うん!会いに行こう!」
「香織...ありがとう...」
「親友だもん!当たり前だよ!」
こうして2人の少女は抱きしめ合い決意した。
1人は、守ると約束した、少年を助けるため
1人は、支えてくれると約束した、少年に想いを伝えるため
「雫! 香織がそっち...に...」
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