皐月の風 / 無敗の二冠
年頃の少女に対する誕生日プレゼントというのは難しい。
欲しいものが分かっているのなら救いもあるが、それがアレなものだとやっぱり難しい。
金銭的に高い? それは確かに大変だ。
希少すぎて手に入らない? それは確かに難しい。
だが、それよりもっと困る要求もある。
まあ、つまり。毎日一緒に寝たいと言われる(寂しさ的な意味で)のはうれしいが、相手が未成年なら事案でしかないのである。社会的に不可能問題というわけだ。
そんなワキちゃんの希望を蹴っ飛ばす以上、何かしら満足してもらえるプレゼントを用意しなくてはならない。
確かウマ娘アプリのタイシンがクリスマスにトレーナーにウマ娘の尻尾リンスなるものをプレゼントしていたので、そういう感じのものは多分ありなのだろう。
というわけで街に繰り出し、ウマ娘用品のショップへ。
当然のように女子しかいない空間に凄まじい居心地の悪さを感じつつも、リンスのコーナーに入り――――何か見覚えのあるウマ娘が真剣な顔で匂いをチェックしているのに気づいた。
「……あ、メジロドーベル」
「だ、誰っ!?」
どぼめじろう先生……はネットミームというか再翻訳ネタだったか。
そういえば男嫌いだった、と少し慌てたがメジロドーベルはごくわずかに鼻を動かしたかと思うと少し緊張を緩めた。
「………もしかして、スズカのトレーナーの…?」
「あ、ああ。そうだけど」
「あ、やっぱり。その、いつもスズカが自慢してるから…あと、なんだかスズカの匂いが」
「………へ、へー」
スズカの布団のお陰か……安心していいのかどうなのか微妙である。
不審者扱いされない代わりに事案扱いされそうなような。
と、そういえばドーベルは香水を選ぶのが得意という特技があった気がする。確かスズカが「スぺちゃんがお腹が減って可哀そうだから、お腹が減らなくなる匂いはないか」みたいな感じのことを聞いていたような。
「そうだ。実はスズカの誕生日プレゼントを探してるんだけど……何かこう、選んじゃいけない匂いとかスズカの嫌いそうな匂いってあるかな」
一応、プレゼントなので最終的には自分で選びたいが駄目なもののヒントはほしい。そんな心意気はドーベルにも伝わってくれたのか、少し表情が緩んだ。
「あ、それなら……一応、ここにあるウマ娘用のなら選んじゃいけないのはないと思いますよ。嫌いな匂いは……ちょっと分からないですけど」
「あ、気持ちが落ち着く匂いとかは……」
「それならこっちの――――」
………
……
…
よし、これでスズカの誕生日プレゼントは大丈夫だ…。
ついでに、これでスズカの匂い依存がもうちょっと健全な方向になってくれれば言うことなし。
と、そこでなんとなくメンコ……もとい、イヤーキャップが目に入る。
むしろサイレンススズカならお馴染みと言っていい緑色のそれ。そういえばサイレンススズカも弥生賞時点ではメンコを付けていなかったか。そのせいもあって余計にスズカとワキちゃんが一致しなかった……というのは言い訳になってしまうが。
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