ログアウト
「さて、仕事の話はこれくらいにして、この出会いを祝して一緒に飲みましょう!」
「私達が奢ってあげるよ」
「わーい、やったー!」
「マスカレーナは自分で払いなさい」
「ちぇー、ケチですねぇ……」
カウンターの空いている席に俺達を誘うキスキルとリィラ。二人は既に何かを飲んでいる様子だったが、グラスに残った分をさっさと飲み干し新たにドリンクを注文していた。
そんな彼女達の好意に素直に従う事にした俺とシェイレーンはEvil★Twinの二人の横に座ったマスカレーナの隣に座る。
「お二人は何か飲んでみたいものはありますか?」
そう言ってマスカレーナがこの店のメニューを渡してくれるが、残念ながら俺は精霊界の文字を読む事が出来ない。そのため、商品の名前が書かれているであろう文字の横にあるイラストから物を予想して注文する事にした。
「じゃあ、オレンジジュースを」
「私も同じの……」
俺と同じようにこの店のメニューを渡されたシェイレーンだが、彼女も頼むものを決めかねていたらしい。それとも、こういった場所で何を頼めば良いか分からなかったのだろうか?
とりあえず、俺と同じものを頼めば変な事にはならないと思ったのか、彼女もオレンジジュースを注文していた。
「おやおや、ラッセさんとシェイレーンさんはお子様ですね。大人がこういう店で頼むものって言うのは決まってるんですよ?」
酒だろうか? 人間に対する法律も何もあったものではない精霊界では未成年の俺が酒を飲んでも問題になることは無いだろうが、単純にあんまり好きじゃないからなぁ。
コーヒーや紅茶でも良かったのだが、今はなんとなくオレンジジュースを飲みたい気分だ。
「店主! 私はカシスオレンジジュース!」
「カシオレか……ってジュースじゃねぇか」
女子大学生みたいなチョイスだなって一瞬思ったらマスカレーナも結局ジュースだったことに思わず突っ込みを入れざるを得ない。
カシスオレンジジュースって……それはもうほとんどオレンジジュースと変わらないと思うのだが、気のせいだろうか。
「うん、美味しい!」
「あ、はい……ん、普通にオレンジジュースだな」
「美味しい……帰ったらまた飲みたいわね」
何故かしたり顔のマスカレーナを適当にあしらいながら、目の前に出されたグラスに恐る恐る口を付ける。
精霊世界のオレンジは実は俺が知っているオレンジと違う可能性も考えていたが、そんな事は杞憂だったらしい。
甘みと酸味が交わったオレンジ色の液体は正しくよく知るオレンジジュースそのものだった。
この果汁1%以下っぽいわざとらしいオレンジジュースの味は大人になっても楽しめるものだと、俺は思うな。
「果物と言えば……ドリュアトランティアの実は美味かった……。あれをジュースにして飲んでみても良かったかもしれないな」
「……え? ちょっと待って、ドリュアトランティアってあの聖天樹の大母神の事!?」
俺の何気ない呟きに凄い勢いで食いついてきたのはカウンターの一番左に座っているキスキルだった。
「? そうだけど?」
「か~~~~っ! 君、中々ぶっ飛んだ事してるわねー」
「聖天樹の大母神の果実はとんでもない貴重品だよ?」
「そうなの?」
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