poppy fields
・・・・・・・・・
地下駐車場にて、ある男が立ち尽くしていた。
この場所に、10時に迎えに来ると言っていた人物はまだ現れない。
「…遅い…」
傍らでセキュリティドローンに睨まれ続け15分が過ぎる。
執行官は単独で外出はできない。逃げ出さないか、監視をされているようだった。
そういえば、前にもこのような事があった、なんてその時の情景を脳裏に浮かべていると、地下駐車場内に車両が近づく音が響く。
そしてやけに荒っぽい運転。
黒いシンプルな車が目の前で停車すると、中から白髪の女性が窓を開け、ひょっこりと顔を覗かせる。
「ごめん!遅刻!15分!」
両手を合わせ、ごめん!!と何度も頭を下げる女性はらどうやら遅刻の常習犯らしく、相手の男もため息を吐くだけだった。
「…舞白。その遅刻癖何とかならないのか?」
「いや〜、渋滞にハマっちゃって」
「嘘をつくな。渋滞情報などない。俺の情報をナメるな」
「……相変わらずだなぁ、ノブ兄は」
ケラケラと笑う姿は昔から変わらない。そして遅刻癖も。仕事の時は10分前行動を確実に行うくせに、プライベートでは相変わらずの様子。
そういえばこの前、霜月もそんなことを言っていた、と思い出しつつも、車へと乗り込む。
2118年 7月 ―――
外務省調整局行動課 特別捜査官 兼
厚生省公安局刑事課 有期限監視官補佐、
なんて長ったらしい立場に置かれている人物、狡噛舞白。兄は同じく、外務省の特別捜査官の狡噛慎也だった。
「お前の運転は荒いから、オートドライブにしておけ。いい加減、海外のノリでハンドルを握るのはやめろ」
「ついついアクセル全開にしちゃうんだよね。」
助手席でガミガミと口煩く文句を言い放つ男、公安局刑事課一係 執行官の宜野座伸元。舞白が海外の放浪生活を終えて、約5ヶ月が経過。しかし未だに運転は荒く、ほかの執行官たちからも苦情を受けていた。そのため基本的に運転は任されないが、今日は状況が違う。
暫く文句を言われ続けていたが、オートドライブに切り替え、落ち着くと、宜野座は舞白に視線を送る。
「…非番なのに悪いな。俺に付き合わせて。」
「そんなことないよ?それに、執行官の外出に同伴するのは服務規程だし。私も、ちょうど行こうと思ってたから。」
今日はお互いに非番だった。基本的に、舞白は新人監視官と同じ扱いだった為、元監視官でもあり、経験豊富な宜野座とシフトを組まされることが多かった。まあ、それはもしかすると、常守の"粋な計らい"なのかもしれないが…。
「あと基本的に私、暇だし(外務省の仕事もあるけど)、大丈夫大丈夫」
「大丈夫そうには見えないが」
若干表情が引き攣っていると感じると、舞白を案じていた。刑事課の激務にプラスして、外務省の仕事も少しはこなしているらしい。とは言っても情報の読み込みだけだと、本人は口にしているが。もちろん外務省の内情を聞く訳には行かなかった。
「お前は何時ぶりに会うんだ?」
「私は1週間ぶりに…」
「…そんなに会ってるのか?」
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