ハーメルン
その首置いてけザフト共
イルクーツク攻略戦 4



 イルクーツクから出撃したザフトの地上部隊は、ヘリ部隊から聞いた隊長の危機を救うべく、雪原の鷲を狙う卑劣なナチュラルの地上部隊に攻撃を加えこれを殲滅戦と猛然と前進する。
 その先頭を走るバクゥとザウートが、雪道を走るククリを装備した連合のトラック部隊を補足した。

「敵部隊を見つけた! 歩兵ランチャーを乗せたトラックだな」

『奴らこっちに気づいてるぞ。投げナイフを乗せたトラックで俺たちに立ち向かうつもりか?』

「構うもんかよ! 俺たちで轢き潰さねえと、あの投げナイフが隊長に向くんだろ!?」

『そうだ! 卑劣なナチュラル共がミサイルを飛ばしてきて仲間がやられた! 1人残らず皆殺しにしてやれ!』

「任せておけ! 命乞いする暇も与えねえ……ぶち殺してやる!」

 ククリを飛ばしてくるトラックに対し、ゲルガーの援護のためにもとザフトのMSパイロットであるメルク・ロビンソンが乗機のバクゥを加速させる。
 仲間を撃たれたことを聞いて激昂する彼は、もはや目につくナチュラル全員を殺さなければこの怒りは収まりそうになかった。

 悪路も難なく走破するバクゥの機動力を生かし、トラックとの距離をみるみる縮めていくメルク。
 射程は十分。走行しながら標準を合わせ、トラックに向けレールガンを発車しようとした時、トラックの方からククリが発射された。

「バカが、そんな不安定な上にロックオンもしないミサイルなんぞ──ぎゃああぁぁぁ!?」

 ロックオンもされていない状態で発射されたミサイル。
 そんなもの当たるわけないと、直撃コースを外れたミサイルなど無視していたが、ミサイルは突然空中で炸裂し強烈な閃光をカメラ越しにメルクの目にお見舞いしてきた。

『急に止まるな──うおっ!?』

 レールガンの狙いを定めるためにカメラ越しの映像に集中していたところに炸裂した閃光弾に視界を潰され、悲鳴をあげるメルク。
 たまらずバクゥのブレーキをかけ緊急減速したことで、前方のメルク機が影になったおかげで閃光弾を食らわずに済んだすぐ後ろを追走していたもう1機のバクゥが避けきれずに追突してきた。

 これにより地上部隊の隊列が乱れ、その直上を通過したヘリ部隊が大きく前方に出てしまう。
 そこへすかさず雪に紛れた伏兵とトラック部隊から多数のミサイルが発射された。

『うわあああぁぁぁ!』
『避けきれない──!?』
『クソッ! こんな数どうすれば──ギャアアァァァ!?』

 ロックオンに頼らず斥候の情報を頼みとして正確な無誘導ミサイル攻撃を行うククリの斉射。
 雪煙で視界が悪い上に対空攻撃を回避するために低空飛行していたことで、ククリの射程圏内という至近距離でこれを食らうこととなったヘリは、回避すらできずに次々に撃ち落とされていく。

 雪煙に紛れれば、敵も対空砲撃を行えない。
 管理された環境であるプラントで生まれ育ったザフトの兵士たちは、雪が舞う銀世界を、極寒の雪原の大地を知らない。
 そしてそのシベリアの世界に慣れ親しみ、吹雪の中でも先を見通す目を育ててきた斥候が存在するということを知らなかった。

 貧弱な歩兵装備を相手に、ザフトはMSに次ぐ戦力である対戦車ヘリ部隊を瞬く間に壊滅に追い込まれてしまった。


[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析