ハーメルン
その首置いてけザフト共
アルテミス攻防戦 3




 民間人を戦争に使わないことを信念とするカリオンが、国際法を順守するという建前を使い、本国上層部にラクスの保護をしたことを知られ余計な横やりが入る前にプラントへ慰霊団の引き渡し交渉を行い、それを受けたシーゲルがプラントのトップとして、同時に娘を思う父親としてラクスの早期帰国を望んだことで、両者の利害は一致。
 デブリベルトの中でも様々な理由からジャンク屋や宇宙海賊すら近寄りたがらない宙域となっている、ユニウスセブンの残骸が集中する宙域にて両陣営の派遣した、グスタフとヴェサリウスの間で慰霊団の引き渡しが行われることとなった。

 本来ならば、何事もなく終わるはずの保護した民間人の引き渡し。
 だが、カリオンとシーゲルによって素早く作られたことで戦争の激化を狙うもの達の横槍を入れる隙を与えることなく用意したはずのこの場に、それは現れた。

「チッ……大西洋の連中め、近くに残っていたのか」

 ラクスとシャトルの機長がグスタフのブリッジからシャトルに乗り込み、アスランとラスティの操縦するジンに引き渡されヴェサリウスに向かうその最中、周囲の宙域を警戒するユウの扱う偵察型ジンのセンサーがヴェサリウスとグスタフめがけて接近してくる多数のMAからなる編隊を発見した。

 多数のメビウスからなる編隊。
 それはこの近くで慰霊団のシャトルを襲撃してきた、あの大西洋連邦の部隊だった。

 本国に確認を取ったところ、大西洋連邦はこの件を否定し付近に作戦行動中の部隊は存在しないとして、連中に宇宙海賊のレッテルを貼り付け切り捨てたという。
 証拠隠滅のため既に大西洋連邦が回収したとみていたが、付近の宙域に残っていたらしく、どこで嗅ぎつけたのかは知らないがラクスの所在を知って襲撃を仕掛けてきたと推測される。

 実際にはこの引き渡しの場を知ったザフト側のある人物がブルーコスモスの重鎮に情報を流し、そこから大西洋連邦の軍部より宇宙海賊のレッテルを貼られ宇宙をさまようしかなくなったラクス暗殺の特務部隊に指令が入ったことで仕掛けられた襲撃である。
 メビウスの編隊は既に本国から切り捨てられた存在であり、宇宙をさまよい餓死するか証拠隠滅のために派遣される大西洋連邦からの刺客の襲撃によって散るしかなく、再度連合に復帰して生還するにはラクス暗殺を成功させる以外の道が残っていなかった。

 そんな宇宙海賊のレッテルを貼られて切り捨てられた暗殺部隊の事情など知らないユウは、メビウスの編隊が慰霊団の襲撃犯達の操っていた機体と同じものであることを確認すると、そのことをグスタフへ通達した。

「ナガト機よりグスタフへ。こちらナガト、周辺宙域を索敵中、接近する所属不明のメビウス編隊を確認。識別コードが慰霊団のシャトルを襲撃していた機体のものと一致しました。至急確認を願います」

『此方グスタフ、了解。……対象のメビウス各機の識別コードの照合ができました。前回交戦した部隊の機体と全て同一機です』

 グスタフに確認してもらったところ、やはり慰霊団を襲撃してきたあの大西洋連邦の部隊だった。
 フェルナンドからは連中の所属に関して大西洋連邦がそんな部隊は知らんという切り捨てに走ったという話は、既にユウ達も聞いている。

『大西洋連邦へ確認した際、対象は大西洋連邦軍が存在を否定、連合を装う何らかの武装組織若しくは宇宙海賊として認定され、プラント民間人および当艦艇所属の部隊に対する攻撃行為により、地球連合加盟国間全土に対し指名手配を受けているテロリストに該当しています』

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