第27機甲連隊 4
クマネズミの主砲では、バクゥの装甲を貫くことはできない。
ただし、27機甲連隊に支給された装備の中で、ディンだけでなくバクゥやザウートの装甲にもまともに傷を与えることができる装備があった。
それが歩兵携行用対MS装甲ミサイルランチャー“LTMS4”、通称“ククリ”。
地球連合がザフトに対して上回っている人口という数の力を持ってザフトのMS兵器に対抗するために開発された、歩兵が運用可能なミサイルランチャーである。
このククリはザフトの主力MSであるジンやバクゥ、グーン、ザウートといったMS兵器の装甲に損傷を与えることが可能な短距離誘導弾を発射する歩兵装備で、市街地や山岳などで奇襲を仕掛けるのに用いられることが多い兵器であった。
しかしながら、所詮は歩兵装備である。
一応マニュアル照準でも発射はできるが、誘導兵器であることからオート照準でロックオンすればザフトのMSにも狙われていることがすぐにバレるほか、発射元の位置をすぐに特定される。
ミサイル自体の速度も必殺となる程ではなく、特にアフリカ戦線ではバクゥに躱されることも珍しくなかった。
単発で連射が効かないのは当たり前、歩兵装備とはいえいざ歩兵で使うとかなり重いので身軽に動けない、縦しんば命中したとしても装甲に傷を与えることはできるが1発ではよほど当たりどころが良くなければ無力化できず逆に弾切れで戦闘能力をなくしたところを反撃にあいミンチにされるというように、歩兵が1人で運用できるというメリットを相殺してしまう多くの問題点を抱える兵器であった。
結局、対応できないくらいの人数で取りかこみ一斉射撃という数の力でゴリ押すという運用がされ、敵の激しい反撃にもあい多大な被害がでる割に有効な戦果を上げられず、MS兵器の装甲を壊せる歩兵用武器という画期的な武器だったはずが役立たずの烙印を押されていた。
それをこの27機甲連隊は大量に配備されていた。
程のいい在庫処分といったところだが、同時にこの多大な犠牲を払ってMS兵器を仕留めるククリを支給したというのは“命を捨てて戦い、そしてお前らもザフトに撃たれて数を減らせ”というコーディネイター嫌いの上層部からの隠れたメッセージにも聞こえた。
そんな大量のククリを支給されたアルトリアは、これは使えると判断し作戦に組み込んだ。
大量のククリはユウ達が配属されているMS部隊を迎撃するための部隊に配備され、氷に身を隠す彼等の手で火を噴く時を待っていた。
威力という面ならば、この大量のククリは対MS戦においてはクマネズミよりも戦力になり得る。
しかし当然ながら、兵力で劣勢な27機甲連隊の兵士達に命を捨てる数でゴリ押す攻撃を強要するつもりは、アルトリアにはない。
アルトリアはMS部隊を翻弄する仕掛けとともに、雪をかぶった森が広がるイルクーツクの北部にククリを装備したユウ達を展開した。
ただし、連隊の人数よりも多い大量のククリを携えた彼等は、地面などに伏せるのではなく雪とその下の土をほった人1人が身を隠せる“狐の巣穴”と呼ばれる塹壕を作り、その中に隠れさせた。
そして、ユウ達がトラックなどで運び作っていたMS部隊を倒すとともにイルクーツクから守備隊を釣り出すための仕掛けを多数配置した戦場に、最初の来客という名の獲物である、後続部隊の壊滅により知らぬ間に孤立していたバクゥ2機とディン1機からなるMS部隊が足を踏み入れた。
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