1章 皇太子ウェールズ
武器を没収されたルイズはベレトとワルドとは違う場所に軟禁された。…なんと、客室である。
「…なめられてるわね…!牢獄に入れるまでもないってこと…!?」
ルイズは憤慨するが、外から誰かが苦笑していることに気づく。見張りの空賊だ。
カールさせた口髭を生やしておりいかにも胡散臭い風貌をしている。
「お嬢さん、我らが頭はきみを偉く気に入っている。捕虜ではなく客人扱いだからねェ!
ただ、いきなり斬りかかるなんて血の気が多すぎるんじゃないかね。空賊の私もドン引きだよ??」
「うるさいヒゲ親父!わたしのレイピア返せっ!」
「うーむ蛮族、きみ貴族だよね?私の知ってるそれとはかなりかけ離れてる…というか、乙女がそんなことを言うんじゃない!」
ルイズはイライラしていた。このおっさんと話しているのは時間の無駄だからだ。
早くベレト達と合流してここから逃げる方法を探さなければならないのに、この胡散臭い空賊に気を取られている場合ではない。
「ちょっと、二人は無事なんでしょうね!?」
「さっき仲間が船倉に入れてたよ。とりあえず捕虜として扱うらしい。…で、きみたちはどうしてここに?」
「…旅行よ。新婚旅行だったの」
「……ウソが下手だな、今アルビオンにあるのは火と死だけだ。新婚旅行で見物するには趣味が悪い…いや、待てよ…?」
胡散臭い空賊の目がギラリと光る。
「……もしや、アルビオンの貴族派かね?」
ルイズは口を閉ざす。
「もしそうなら、私たちは味方だ。たまに王党派に与しようとする者が出てくるので捕らえろと命じられている」
「アンタたち、空賊に偽装した反乱軍なの…!?」
「ああいや、言い方が悪いか。あくまでも協力関係というだけだよ。
…もし、きみたちが貴族派なら…きちんと港まで送り届ける」
ルイズはその提案を、鼻で笑った。
「だーれが薄汚い反乱軍の味方なもんですかッ!バカも休み休み言いなさい、わたしは王党派への使いなの。
ざんねんでした、べーっ!」
「……………。きみ、さては馬鹿だな…?ここはウソでも貴族派だと言うべき場面では…?」
空賊は無鉄砲極まりないルイズに頭を抱えている。正直は美徳だが、敵地で正直者はふさわしくないだろう…。
「アンタたちに頭を下げるくらいなら死んだほうがまだマシよ!」
「……はあ、頭に報告しなければいけないではないか。少し考える時間を与えよう、あたまを冷やしなさいお嬢さん」
「…アンタたちにウソつくくらいなら、戦ってやるわよ」
空賊は五分ほどで戻ってくると、厳しい顔でルイズに命令する。
「……頭がお呼びだ、出たまえ!」
狭い通路を通っている途中で、ルイズは二人と合流した。ベレトはルイズを見て哀しそうな目をする。
「…さっき見張りから聞いたぞ、王党派の使いだって口走っちゃったって……」
「……だってぇ…」
「…言っちゃったならしょうがない、もしヤバくなったらアドリブでなんとかしよう…」
三人は立派なつくりの船長室に連行されると、空賊頭が出迎えた。
豪華なディナーテーブルの向こう側で、男は大きな水晶付きの杖をいじっている。
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