序章 使い魔の傭兵
ベレトは困惑していた。
自分は今の今まで光が一切届くことのない地下都市を脱出するために疾走していたはずだ。
ならば、草原で立ち尽くしているこの状況はおかしい。
自分の名前を答えた彼は、一旦周りにいる彼らを観察してみることにした。
彼は自分に杖を向ける魔法使いや、桃色の髪の女の子のほかにも多くの少年少女がいることに気づく。
…彼らは、ベレトを見るなりこう言い放った。
「…へ、平民だ。ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!!」
「アハハハハハ!!さすがはゼロのルイズねぇ!!」
爆笑する子供たちに、コルベールは慌てたように叫んだ。
この傭兵が暴れだしたら血の気の多い生徒が危険だからである。
「や、やめなさい!!今すぐ教室に戻るんだ!!」
その必死な言葉に、生徒たちはただならぬ雰囲気を感じたのか顔を見合わせると、その場を浮きながら去っていく。
ベレトはその場に残った彼らをじっと見つめていると、不意に魔法使いの男から声をかけられた。
「…失礼、彼らはまだ未熟なのです。どうか、気を悪くしないでほしい。
私はコルベール、トリステイン魔法学院の教師をさせてもらっている。」
「…自分を呼んだのは、貴方か?」
「…いや、そうではない。この使い魔召喚の儀式はこの学院に入学した生徒にとって、とても大切な意味がある。
二年生に進級して専門課程を選ぶには、使い魔の属性が重要となるんだ。」
そう言ったコルベールに、ルイズが抗議をしはじめた。
「せ、先生!?やり直すことって…。」
「……ミス・ヴァリエール、私個人としては反対したいのもわかる。
が、呼び出してしまった以上しょうがない。次の授業も迫っているし、申し訳ないが彼と契約してもらいたい」
「……………わ、わかり、ました…」
ルイズはベレトに近づく。
「…それで、契約とは具体的に何をするんだ」
「……ちょっとしゃがみなさい」
言われた通りにしゃがんだベレトに、ルイズは杖を振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
チョンと杖をベレトのおでこに置き、左手で彼の頭を固定しはじめる。
かおを近づけだした少女に、ベレトは珍しく動揺しはじめた。
この後の展開がなんとなくわかったからである。
「…待て、何をするつもりだ」
「じっとしてなさい」
そう言いながらルイズは、あっという間にベレトの唇を奪った。
「……………!!?」
「…ぷはッ。…おわりました、先生」
ルイズは美形のベレトにキスしたからか、顔をりんごのように赤くして照れている。
一方された側のベレトは頭の中がはてなマークで埋まっていた。
キスそのものは初めてではないが、それでもほぼ初対面の女の子にされた経験はない。
頭が疑問で埋め尽くされたベレトは、身体が高熱を放っていることに気づいた。
「…なんだ、身体が、燃えるように熱い…」
幸いそれはすぐに収まったが、なにやらコルベールは気になることがある様子でこちらにしゃべりだした。
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