ハーメルン
ゼロと師
序章 無能(ゼロ)のルイズ

 部屋を出たルイズ達は、同じように部屋を出た少女と鉢合わせした。
 炎のように真っ赤な髪の、エキゾチックな美人である。

「あら、おはようルイズ」

「げっ…。…お、おはようキュルケ」

 赤毛の美女の挨拶に、ルイズは露骨に嫌そうな顔をしながらも朝の挨拶を返す。

「それにしても…ププッ!ホントに人間呼んじゃったのねー!!
《サモン・サーヴァント》で平民を召喚しちゃうなんて、さすがゼロのルイズ!」

「ーッ!!うるさいわね、アンタにはかんけーないでしょ!?」

 彼女はルイズのことを露骨に馬鹿にしているようだ。
 怒っているルイズをよそに、キュルケは部屋の中にまだいたソレに向けて手招きしている。

「ほ~ら、来なさいフレイム~。このちんまいのにあいさつしましょう?」

 部屋から出てきたのは、身体のあちこちから火を出している巨大なトカゲだった。
 ルイズは悔しそうな顔で尋ねる。

「これ、サラマンダー?」

「ええ、こんなに育ちがいいサラマンダーは間違いなく火竜山脈生まれよ?
ふふふ、あたしにピッタリだと思わない?」

「あっそ、よかったわね。アンタ属性『火』だしさぞ嬉しいんでしょ」

「ええ、微熱のキュルケだもの。余裕のないあなたと違ってモテるのよ」

 キュルケは得意そうにその大きな胸を張った。
 ルイズはキュルケを睨むが、彼女は余裕の態度でスルー。

「それで、あなたの名前は?」

 ぼーっと少女たちの心温まる(?)交流を見ていたベレトは、キュルケがこちらに話を振ってきたことに気づく。

「自分はベレト。…よろしく」

「ベレト…なんだか似合わない名前」

 初めてそんなことを言われたベレトは不思議そうにキュルケの顔を見るが、真意はわからない。

「ふふ、それじゃお先に失礼♪」

 颯爽と去っていくキュルケの後ろ姿を、ルイズはイライラしながら見ていた。

「あんの頭微熱女ぁぁぁ!!!バカのくせに強そうなサラマンダーなんか連れてー!!」

「…羨ましかったのか…」

「少なくともこっちは属性がわかんないのを呼ぶとか思ってなかったのよ!!
人間の属性ってなによ!?」

「…さあ?」


 トリステイン魔法学院の食堂についたベレトは、いつもの癖で料理当番を探そうと周りを見渡した。

「…なにしてんのアンタ」

「いや、いつもの癖で…」

 ルイズは一瞬怪訝そうな顔をするが、すぐにどや顔で食堂を自慢しはじめた。

「この魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないわ。メイジはほぼ全員貴族でもあるの。
貴族が貴族たるべき教育を存分に受けるのよ!」

「で、それをちゃんと実行できるのがどれくらいいるんだ?」

 ルイズの笑顔が固まる。…が、彼女は聞かなかったことにしたらしい。

「…………。だ、だからこの《アルヴィーズの食堂》も貴族にふさわしいものでなくちゃいけないの!
だから、ホントはアンタが入っていいわけじゃないのよ!」

「……それで?」

「アンタ専用に皿を用意したから、食事はそれを食べなさい」

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