序章 土くれの襲撃
魔剣デルフリンガーとの出会いがあったその日の夜、ルイズの部屋で騒動が起きていた。
ルイズとキュルケがお互いににらみ合っているのである。ベレトはもう寝る準備を始めていた。
「…何の用かしらツェルプストー?」
「ベレトせんせいに剣を買ってたわよね?でもあなた、せっかくのプレゼントなのにあんなしょぼい武器で満足したのねえ」
「……あ゛?」
「せんせい、この剣ゲルマニアの錬金術師が鍛えたんですって。店主のおじ様いわく、鉄すら一刀両断するそうよ?」
キュルケの持っているそれをチラ見したベレトは、彼女の剣が例のなまくらだと気づきひきつった笑顔になる。
「………い、いらない…」
「もう、そんな謙遜しなくていいのよ?」
(違う、そうじゃない…!本気でいらないんだこっちは…実戦で使えないからもらっても置物にしかならないんだ…!!)
ルイズはキレた。プライドを傷つけられただけでなくゴミを押し付けられたからである。
「いい加減にしなさい色ボケ!!それなまくらだって聞いたわよ、持って帰れ!!」
「ふふふ、負け惜しみにしか聞こえないわよヴァリエール!」
犬猿の仲の二人がギャーギャー言い争っている横で、新しく本を買ってもらったタバサが読書に集中していた。
ベレトは彼女のことを見たことがある。この世界にやってきて二日目に助けてくれたあの小さな女の子だ。
綺麗な青い髪だったので、傭兵は覚えていた。
「ねえせんせい、剣も女もゲルマニアに限るわよ?トリステインの女なんて嫉妬深くてジメジメしてて、どうしようもないんだから」
「あら、年中頭が熱でおかしいゲルマニアの女よりまだマシよね?」
「「………………。」」
ルイズとキュルケは数秒見つめ合い…。
「「殺すッ!!」」
杖に手をかけた。…が、一触即発の状況でタバサが動く。
魔法でつむじ風をおこした彼女は二人の杖を叩き落とした。
「…室内」
「……あー、ごめんねタバサ。ちょっと頭に血が上ってたわ」
「…うん?ところでアンタ誰…?なんでわたしの部屋でくつろいでんの…?」
ルイズの疑問に、キュルケは答えた。
「あたしの友達よ。名前はタバサ」
「…なんでいるの?」
「悪いかしら?」
「自分の部屋で読めばいいんじゃない…?」
殺意が薄れたのを見て、ベレトはホッと息を吐いた。
こんな場所で殺し合いとか確実に巻き込まれるだろう。
「…じゃあ、こうしましょ。……ねーせんせい、どっちの剣がいーい?」
キュルケは笑顔でベレトに質問する。
「それどちらか選んだらもう片方に酷い目に遭わされるやつだろう…?」
「そうね!」
ルイズは鞭を取り出し、ベレトに微笑んだ。…笑顔というものは獣の威嚇が起源だと言われているが、あながち間違いでもない。
「…こいつが決める気がないなら、やることは一つね…!」
「ええ、決着をつけましょうか、ヴァリエール。……決闘で、ね?」
「やめるんだ二人とも。君たちの仲の悪さだと殺し合いになりかねない。
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