ハーメルン
幻想郷に中途半端に転生したんだが
RPGみたいに敵の強さは変わっていかない


投げ出されながらもひしがきは何とか体勢を立て直そうと結界を張る。緩やかな傾斜を結界で作り出しそこを転げ落ちることで地面に叩きつけられる事を防いだ。地面に無事着地したひしがきは山犬に向って槍を構える。向こうも地面に叩きつけられてもなお殺気に満ちた目で立ち上がりこちらを睨んでいた。

逃げられない。速さが違いすぎる。そう判断したひしがきは今自分が出来る最大限の強化を体に施す。激痛の走る左腕を動かして槍を向ける。逃げられないなら戦うしかない。幸い相手は弱っている。ならやりようはある。

自分を鼓舞し山犬と向かい合う。山犬ももはや相手を弱いと認識してひなかった。相手を敵と認識し体勢を低く構える。今まさに両者の死闘が






「ねぇ」






始まらなかった。

まるで空気が凍ったようにひしがきは感じた。まるで体の中から凍りつくような怖気がひしがきを支配する。その問いかけと感覚にひしがきは既視感を覚えた。

ひしがきだけではない。つい先程まで殺気に満ちていた山犬さえもひどく怯えている。そこにはさっきまでの強い妖怪は居らず、自分同様の弱者の姿があった。

「貴方たち」

凍りついたように動かない、動いてくれない体を無理矢理動かし声のする方へと顔を向ける。

この幻想郷には見慣れない洋服、シャツにチェックのスカート。ウェーブの掛かった美しい翡翠色の髪。その紅玉のような赤い目と、三日月の様に笑う赤い口は、記憶の中にある最悪の妖怪を彷彿とさせた。

周りに目をやるとソレの向こうにひまわりが見える。

(……マジ…かよ………)

最悪だ。よりによって此処に出てきてしまうとは。

そう、此処は幻想郷で一番美しく、危険な場所。花々が咲き誇るその場所を人は太陽の畑と言う。そしてその主の名を

「此処で何してるのかしら?」


風見幽香と言った。

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