ハーメルン
幻想郷に中途半端に転生したんだが
どうしようもなくても、引けない時がある


そこに大太刀を振り上げていた退治屋の頭領が、鬼の脳天目掛けて刀を振り下ろした。全盛期を過ぎ老いて尚、衰えぬその筋力と大柄な体格から振り下ろされる刀は鬼の頭に激突する。単純な一撃のみの強さで言えば、その一太刀はひしがきをも越えているかもしれない。


ガギィィィィンッ


まるで岩に叩き付けたような音が響く。頭領はすばやく鬼との距離を取る。鬼の額からは僅かに一筋の血が流れていた。


■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!


鬼が吼える。その咆哮は周囲を吹き飛ばし軋ませる。初めて鬼が怒りを露にした。頭領を睨みつけると。鬼は残りの網を引き裂き突進する。頭領は近くの倉へとすばやく入る。おそらくは貯蓄用の倉であろうそれは他の建造物よりも丈夫な造りをしている。が、そんなもの鬼にとってはどれも大差ない。壁を粉砕し中に突貫する。


■■■■■■■■ッッ!?


中に入った途端に鬼が転倒する。その倉は多く貯蔵できるように下が低くなっており段差が出来ていた。鬼は足を大きく踏み外し転げ落ちる。またその中には油がたっぷりと引いてあった。


「今だ!火を付けろ!」


鬼が倒れている隙に別の出口から脱出していた頭領が声をかけると倉の中に火矢が数本射れられる。油を伝い火は瞬く間に広がる。油の中を転げまわった鬼にももちろん火の手は襲い掛かった。火を浴びながらも鬼は怯むことなく立ち上がる。


その時、鬼の頭上から瓦礫ごと倉が崩れ落ちた。





博麗の巫女という存在が居る為に、人里の退治屋について誤解をしている者は人間妖怪問わず少なくない。なぜなら人間は弱い。博麗の巫女と言う例外はあれどその認識が強い。実際それは間違いではない。人間は妖怪と比べてあまりに非力だ。


しかし、考えて欲しい。それは現代においても同じなのだ。例えば人間は獅子には勝てない。人間は虎には勝てない。他にも狼、熊、豹あるいは象、犀、河馬。その力で言えばシマウマにさえ人間は劣る。だが人間はそれらの獣にはない知恵がある。その知恵で以って人間は獣を下すことが出来る。


それはこの幻想郷においても同じである。力の劣る彼らは妖怪に対してその知恵で策を練り武器を作る。まして幻想郷において退治屋とは対妖怪の専門家である。それはこの現状を見てもらえれば納得してもらえるだろう。さっきまで破壊の限りを尽くしていた妖怪。人間では到底太刀打ちできないその妖怪を相手に策を練り、撹乱し、挑発し、罠にはめた。熟練された手腕である。


「やった!」


「倒したぞ!!」


崩れ落ちた倉の下敷きになった鬼を見た退治屋達が歓声を上げる。ひしがきの活躍によって妖怪の被害にあまり遭わなかった退治屋たちは始めての大きな妖怪の襲撃を撃退したことによる達成感に包まれ喜びの声をあげる。


「……………騒ぐんじゃねぇ!!」


しかし再び頭領の一喝によって歓声が止む。見ると頭領だけでなく頭領と同じ世代の退治屋たちは油断なく構えていた。瞬間、瓦礫が弾け跳んだ。砕け跳んだ瓦礫は散弾の如く周囲に襲い掛かり数人に食い込む。


「全員下がれぇ!!」


退治屋達が距離を取る。瓦礫が弾け跳んだ場所から黒い煙を立たせながら鬼が姿を現した。その姿は僅かに表面が焼けているだけで目立った外傷はない。

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