案外決着ってのはあっさりしてるもの
何よりさっきまでは肌を刺すような妖力が今は驚くほどに小さくなっている。
あれが、博麗霊夢の時代にいたルーミア。封印され力を失った宵闇の妖怪の姿だった。封印されたとは思えないほど安らかな顔で眠っているルーミアを見届けると、巫女がこちらに顔を向けた。
「………あ」
先程から変わらない無表情な顔でこちらを見る巫女。ようやく俺は彼女の顔を正面から見た。
「………」
「………」
お互いに無言。向こうは何を考えているか見当もつかない上にこっちは何を言っていいか分からず言葉を詰まらせる。
助かりました?はじめまして?いやいやとりあえずまずはお礼を言おう。
「あ、の…ありがとうございます……」
「………」
巫女は何も応えずにこちらを見下ろしている。
何だろう?彼女は一体俺を見て一体何を考えているのか。
「あの……」
それ以上何を言っていいか分からない俺はとりあえず彼女に話しかけることにした。今の自分は体が疲労と恐怖でまったく動かない、動いてくれない。できれば彼女に人里まで連れて行って欲しいところだ。
すると突然巫女はこちらに向って歩き出した。こっちの目をまるで見定めるように見ながら近づいてくる。
いきなり近づく巫女に一瞬体が強張る。彼女の目から目を逸らすことができない。
(……あ、れ)
意識が遠退いていく。体と能力を酷使しすぎたせいだろうか。意識を保つことが出来ない。
巫女と視線が交差する。
深い、深遠のように深いのにどこまでも透き通っている黒い瞳。それは自分の知識の中にあるどんな物より、自分の人生の中で今までに見た何よりも
(……ああ、なんて)
そこで俺の意識引きずられるように落ちていった。
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