ハーメルン
幻想郷に中途半端に転生したんだが
男の子はたたかれて強くなるもんさ



二つ目はあの時、ルーミアが俺を殺そうとした時に発動した黒い結界。死の間際、生存本能によって極限にまで高められた集中力によって限界を超えるなんて事は実際に在り得そうなことではあるがあの結界についてはなにか違和感を覚える。


そもそも生存本能とは生きたいという生命の意思のようなものだ。自分はあの時既に諦め死を受け入れていた。その自分が死を目前に力に目覚めるなんて事はどうにも腑に落ちない。


そもそも仮に力に目覚めたとして本当に自分はルーミアの腕を防いだのだろうか?それが未だに信じられない。


しかし、何はともあれ自分の能力に新たな可能性を見出せたことは僥倖である。今後は黒い結界について考察していこう。



そうして体を休め傷を癒しながらも今後の目標を立て、具体的な方針を考えていた。家での療養はそれなりに楽しかったと思う。弟や妹達は子どもらしく無邪気に遊びながらそれぞれ家で与えられた役割をこなしている。久しぶりに一緒に過ごす俺に色々と話をせがんでくる弟妹との時間は俺を和ませてくれた。


やはりいつの間にか俺の家は金銭的にそこそこ安定しているようで家族全員が大きな問題も無く暮らしていけるようになっていたらしい。とは言え安定しているとは言え今更俺が普通の子どものように寺子屋に通えるわけではない。俺には既に役割があり残念なことにそれが出来る能力もあるのだ。


仮に俺がそれを望んでも俺の立場が悪くなるだけで下手をしたらそれが家族全員に及ぶ可能性もある。そして体がある程度回復すると俺は再び畑の警護に戻ることになった。







畑の片隅、俺は腰を下ろし目を閉じて意識を集中させる。あの時、死を目前にした時の光景。迫り来るルーミアは俺の命を刈り取ろうとその腕を振り上げる。ひどく長く感じた刹那の時間。


あの時自分は何を感じた?何を思った?何を考えた?


恐怖?いや違う。そんなものはとっくに麻痺してただ諦観があっただけだ。


絶望?それでもない。そもそも最初から望みなんてないようなものだ。


自分が最後に浮かび上がった感情。それは、怒りでもない憎しみとも少し違う。


自分を取り巻く理不尽に向けての怨嗟の感情だった。




「……結」


目を開ける。そこにはあの時よりも確かな顕現を見せる黒の結界があった。


以前感情の爆発が能力に影響を及ぼすことを発見した。しかし、それはただ感情が高ぶればいいというわけではなく、それが何の感情で力が増すのかも分からなかった。


黒い、禍々しい結界。それが発動する感情は『恨み』。それに加えて結界に新たに組み込んだ術式は今までの陰陽道や神道とも違う『呪術』。


「……う~ん」


休んでいる間に色々と黒い結界について考えた。恨みの感情に俺の結界が強く反応するのは直ぐに思い当たったが、もしかしたらとためしに呪術の術式を組み込んだのは正解だったようだ。


「つまり、俺には神道や陰陽道よりも呪術の方が向いてるってことか…」


『呪術』。いままで結界とはあまりイメージが会わなかったからこちら方面には手を出してこなかったが基本的には儀式めいた術の類だったように思う。

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