男の子はたたかれて強くなるもんさ
試しに以前と同じ用に妖怪の毛を置いてみる。するとあっという間に毛は黒く変色し朽ち果てた。それは退魔の術式とは違い滅するというよりも侵すといった表現が合う。しかし、その効果は明らかに呪術の方が上だ。
だが、それでも疑問は残る。確かに『術の効果』は以前よりも高い。しかし『結界の強度』としてこれはルーミアの腕を防げるほどなのだろうか。いままで『術の効果』と『結界の強度』は比例してその精度が上がってきているがそれはこの黒い結界に関しても同じとは限らない。何しろこれまでとは組み込んできた術の根本からして違うのだ。逆に強度が弱くなっていたとしても不思議ではない。
仮に今までと同じく強度が上がっていたとしても果たしてあの時突き出された腕を防ぎうるほどかといわれれば半信半疑になってしまう。正直言ってアレを防ぐにはおそらく今までの数十倍の力が必要になってくるだろう。それこそあの時の博麗の巫女が纏っていた力に匹敵する力が必要だ。
結界を見る。『術の効果』はたった今試した。ならば次は『結界の強度』。出来ることならばある程度強い妖怪を相手に試したいがこんな状態ではいささか異常に不安だ。それでも、ここに妖怪が来る様なら腹を括るしかないがそうでもないなら今は傷を一刻も早く治したい。
「ま、少なくとも効果は大分見込めるわけだし。あとは追々考えていけばいいか」
博麗の巫女のおかげで、妖怪が姿を現す頻度は少なくなった。今も安全とは言えないがこうして畑を眺めると何とものどかに感じる。
「……………ふぅ~~」
折れた腕と胴体を無事なもう一方の手で確かめるように撫でる。ここ最近は仕事の後家に帰って休んでいる。そのおかげか経過は順調だ。後一月もあれば大分体も動くだろう。
「家に帰ったらまた話でもしてやるかな」
幼い兄弟たちを思い浮かべながら穏やかな時間を過ごす。平穏。少し偉そうだが今ならそれがどれだけ尊いものか分かる気がした。
そして、ちょうど一月がたったある日。博麗の巫女が重傷を負ったという知らせが人里に届いた。
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