ヒャッハー!
そして全てを聞いた慧音は大きな衝撃を受けた。慧音は人間が好きだ。人里が好きだ。だから将来里を支えていく子どもたちを自分が導こうと長年教師をやってきた。
ひしがきの事も、里の事情を考え口は出さないでいたが、いずれ自分が教師として彼に様々な事を教えたいと思っていたのである。それが自分の知らぬ間に手の届かない場所で苦しんでいる。慧音はすぐにやめさせるように内心怒りながら里長に言った。
しかし、返ってきた返事は否。しかし、それでも食い下がる慧音に里長は静かに告げた。
「では、慧音先生には他に案があるのですか?」
そう言われ慧音は口を紡ぐ。彼女も人里の恐慌具合は重々承知している。不安に怯える子どもたちを安心させようと励まし里のために尽力してきた。
しかし、だからと言って黙認できるほど彼女は非情ではない。慧音の性格を知っている長もまた彼女のために用意しておいた説明を述べる。
博麗を名乗るのは次の巫女が選ばれるまで。
おそらく1年もすれば巫女は選ばれる。
その間博麗を名乗れるのは長い間里の守ってきたひしがきだけ。
里はひしがきのために全面的に協力をする。
その役割の内容は今まで里の中でやってきたことと大差はない。
里長は懇切丁寧にひしがきの役割を説明した。渋い顔で黙って聞いていた慧音であったが『里のために、どうか理解と協力を頂きたい』と言う長の言葉にしぶしぶ頷いた。
慧音も状況は理解しているためこれ以上は無理だろうと判断し近いうちにひしがきに会いに行こうと心に決めその場を後にした。しかし、慧音は里の状況を正確に理解してもひしがきの状況を正確には理解してはいなかった。
基本的に慧音は里の人間を信頼している。里長の里を想う気持ちも知っているため疑うことをしなかった。また役割の内容は今まで里の中でやってきたことと大差はないというのはまったくの見当違いだ。
今まで力の強い妖怪は博麗の巫女が退治してきた。ひしがきが退治してきた妖怪は相手にもされなかった弱小妖怪。これからは今までよりも力のある妖怪を相手にしなければならない。
そして、それは博麗を名乗る者にしか分からないことであるが……。博麗とは妖怪にとって恨みの対象でもあるのだ。
これを知るのは今はまだおそらく博麗の巫女本人と、妖怪の賢者のみである。
[9]前 [1]次話 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:5/5
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク