ハーメルン
幻想郷に中途半端に転生したんだが
身近な物の価値には気づきにくい




魔法の森の入り口には一軒の店がある。


物が雑多に置かれている風景はゴミ捨て場のようにも見える。幻想郷に住むほとんどはそれらが何のための道具か見当も付かないだろう。


それもそのはず。ここにあるのは幻想郷の外から流れ着いた道具達。この店、香霖堂は幻想郷で唯一外の道具を預かる店だ。






カランッ


扉を開けて中に入る。様々な道具が棚や箱に入れられ所狭しと並んでいる。全体的に埃っぽく店というよりは物置に近い。


その奥の机に新聞を広げて座っている青年といえる年頃に見える男、この店の店主森近霖之助は新聞に向けていた顔を上げ入ってきた相手を見た。


「やあ、ひしがき。いらっしゃい」


「おじゃまします」


ひしがきは霖之助に軽く頭を下げて挨拶した。










この二人の出会いはひしがきが博麗を名乗ってから始まった。霧雨の主人の勧めで何か必要な道具があったら訪ねるといいと勧められたからだ。


ひしがきは生き残る上でその可能性を少しでも上げるべく、知識の中から主人公達に様々な道具を作っていた香霖堂へと向った。霖之助もまたひしがきの立場に協力的に力を貸すことにした。


「調子はどうだい?」


「変わりありません。毎度、死にかけてます」


「………あんまり良くないみたいだね。無理するな、とは君の立場から言えないだろうけど体には気を付けるんだよ」


「一応、分かりましたとだけ言っておきます」


苦笑しながら軽く話すとひしがきはさっそく本題に入った。


「それでなんですが、また頼みたいことがあるんです」


「ふむ、なんだい」


「魔法の触媒を作って欲しいんです」


そういうと霖之助はふむ、と口に手を当て考えた。


「何の為に使うつもりだい?」


「少しばかり試したいことがあるんですよ」


そういうとひしがきは理由を霖之助に話し始めた。


元々ひしがきは結界と霊力の行使を主に戦ってきた。それほど霊力の内容量が多くないひしがきが霊力を使う理由は機動力の確保と槍という武器を使うためである。しかし、今までは運良く無事に生き延びてきたがこれからを考えると明らかに不足だ。


霊力はそう簡単に増えるものではない。生まれつきの素質が多くを占める上に生半端な方法では増量は見込めない。少しでも無駄を省く為、効率的に活用するための方法を模索し検証してきたが今以上の成果は見込めそうに無い。


ならば足りない部分は他で補えばいい。この世界にある『力』は霊力だけではない。魔力、妖力、気、神力などがある。神力は現人神でもないただの人間であるひしがきには使えない。妖力は妖怪の力である。藤原妹紅が妖力を使っていたが多くの場合人外になることでしか使えないので除外する。気は自然と一体化する長い修行の末に得られるものですぐには習得できない。


残るは魔力一つ。魔力もまた使いこなすには時間がかかり、そこから術式を組んで魔法を使うには更に時間が掛かる。しかし、ひしがきの目的は身体強化一つのみ。これに集中しておけば後は触媒さえあれば更に早く魔力を使えるようになるだろう。

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