ハーメルン
幻想郷に中途半端に転生したんだが
身近な物の価値には気づきにくい


「まあ、一応知っておいたほうがいいと思ってね。せっかくだし大事にするといいよ」


「……ですね」


とりあえず今後は槍の手入れに時間をかけよう。下手に扱ったらバチが当たりそうだ。


そして軽く頭を下げると香霖堂を後にした。












博麗神社に戻るとひしがきは神社の裏手に移動した。そこはひしがきが自分を鍛える為にいつも使っている場所だ。


「…………」


ひしがきは無言でその場で座禅を組む。普段この場ではひしがきは様々な方法で自らを鍛えている。


結界に関しては同時に限界まで多くの数の結界を展開したり渾身の力を籠めた結界を展開したりすることもあれば身体強化を施して常に動きながら槍をひたすらに突くなど力尽きるまで黙々と鍛え続ける。つい先日疲れ切った後に妖怪退治の呼び出しが掛かったときは本当に死を覚悟した。今生きているのは本当に奇跡的だ。


今ひしがきが行っているのは霊力の効率的な行使。博麗の巫女はその膨大な霊力で全身を強化していたがそんなことはどう足掻いてもひしがきには出来ない。ならば必要な箇所に必要なだけ、そうでない箇所には最低限の霊力で強化することで無駄を省き霊力を抑える。


ひしがきは各関節を基点としそれを繋げるイメージで霊力を流し強化している。これは以前も行ってきた機動力を確保するためのもの。そして此処からが重要なところだ。霊力をそのままに、ひしがきは魔力を少しずつ体に纏わせていく。霊力が体の内側を強化し魔力が外側を強化する。ひしがきは少しずつゆっくりと魔力を流していく。


「……っ!」


魔力が霊力の濃い場所に流れると突然全身に流れている霊力が乱れ始めた。規則正しく流れていた霊力がデタラメに体の中を駆け巡る。


「――――――――!」


内臓や血管が暴れまわるような感覚に思わず吐きそうになる。歯を食いしばりそれに耐えると慌てて魔力を止めて霊力を掌握する。乱れた霊力を押さえ込み元の流れへと戻していく。


「~~~~~~~~~~ぷはぁっ!」


元に戻し終わると傾く体を手で支えながら大きく息を吐く。全身を嫌な汗が一気に流れ出した。


危なかった。


まさか此処までリスクが高いとは思わなかった。僅かな魔力との接触で此処まで霊力が乱れるとは。それに今の現象からだが内側から捻じれる様な感覚。一歩間違えれば大惨事になっていたかも知れない。


「………いきなり全身からは早すぎたかな」


まずは一部分から徐々に広げていくか。


また座禅を組み意識を集中させた。

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