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次の日。トリステイン学院は噂の盗賊、『土くれのフーケ』の襲撃という前代未聞の大事件で大騒ぎになっていた。厳重な『固定化』の魔法で守られていたはずの秘宝が強奪されたのだ。そして犯行現場には、『悪のオーブ、確かに領収いたしました』という犯行の旨を記したカードが落ちていた。まさに学院創設以来初の大事件であり、同時に過去に例を見ない大失態でもあった。学院長室では、教師達が集まり対策会議と称して責任の擦り合いを行っていた。それを一喝して黙らせたオスマンがゆっくりと口を開く。
スッ
するとルイズが杖を掲げる。
「私が行きます!」
フーケを捕まえてみんなを見返してやる!そう決意を固め凛々しく名乗りを上げた。それを見て驚いたミセス・シュヴルーズが声を上げる。
「あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて・・・・」
するとキュルケも、しぶしぶと杖を掲げた。
「ヴァリエールには負けられませんわ。」
さらに続けてタバサも杖を掲げる。
「タバサ。あんたまで付き合わなくても・・・・・」
「心配。」
そんな三人の様子を見て、オスマンが笑った。
「そうか。では、君らに頼むとしようか。」
「オールド・オスマン!わたしは反対です!生徒達をそんな危険にさらすわけには!」
「では君が行くかね、ミセス・シュヴルーズ?」
「い、いえ・・・・。わたしは体調が優れませんので・・・・・」
異議を申し立てたシュヴルーズだったがオスマンの言葉に引っ込んでしまった。
「うむ、では彼女等に頼む事としよう!」
その様子を見てオスマンが言った。
「心配はいらん!ミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いている!」
その言葉に教師達は驚いたようにタバサを見つめた。
「本当なの?タバサ」
キュルケも初耳だったらしく驚いている。そしてオスマンは、キュルケに視線を向ける。
「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出身で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
オスマンの説明にキュルケは得意げに、髪をかきあげた。それからルイズが自分の番と言うかのように可愛らしく胸を張る。だがオスマンは即言葉に詰まり、さりげなく目を逸らす。
「その・・・・・、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?しかもその使い魔は!」
オスマンの「使い魔」という言葉に教師たちは全員ビクつき、即目を逸らした。そして当の本人は自分よりも使い魔が褒められた事にムッとする。
「この三人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ!!!!」
オスマンが威厳のある声で言う。そして誰も反論しないことを確認すると
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!」
ルイズたちは真顔になって直立する。そして
「『「杖にかけて!!!」』」
唱和し、スカートのすそをつまんで恭しく礼をする。
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