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サイトは別室に呼び出された。呼び出したのは勿論、アンリエッタである。
「サイトさん、お願いがあります!」
「嫌なこった。」
アンリエッタの頼みを即答するサイト。
「まだ何も言ってませんが?」
「言わなくても分かる。『悪のオーブを奪還して来い』ってんだろ?何でわざわざオレが出ねぇと行けねぇんだよ?」
剣呑な雰囲気を隠そうともせず、怒りと不満を滲ませた声が響いた。
「アイツらだけで十分だろ。学院の秘宝だのマジックアイテムだの、そんなものがどうなろうとオレには関係ねぇ。」
興味などない、という風にサイトはそっぽを向く。すると、あからさまに落ち込んだ様子のアンリエッタが顔をずいと寄せてきた。息を感じるほど近くへ来たことを感じ、アンリエッタは一瞬ドキリとなる。だが彼の動揺には気づかない様子で、アンリエッタはそのまま詰め寄った。
「どうしても・・・・・・・ダメですか?」
「そう言っている。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・オレは行かん。」
「ホントに、ダメ? ですか・・・・・・・・?」
「オイ・・・・だから、オレの話を・・・・・・・・」
「・・・・・・ぐすっ」
「・・・・・・・・。」
アンリエッタが見上げてくる。うるうるうると見つめてくる。その目は水気を帯びており、目尻に抑えきれなくなったものが零れ落ちる寸前であった。ここでもし断ったり突き放したりしようものなら、一気に決壊してサイトを飲み込むだろう。被害を受けているのはむしろ自分の方だというのに、なんとも理不尽である。いつもながらここは頭痛の種には事欠かない場所であった。無論彼にとっては不都合極まりないが。
「くっ・・・・・ええいわかった、行ってやる。」
「――! ありがとうございますっ!『ただし条件がある!』え?」
「この任務を終えたら、一晩俺に付き合え。」
サイトはアンリエッタに取引を申し出た。アンリエッタは、しばらく無言だったが言葉の意味を段々理解し、徐々に顔を真っ赤にしていく。口約束とはいえ、彼女はサイトと結婚しているのだ。そして結婚といったらまあ、そういう事は付き物だ。サイトは、約束通りアンリエッタに付き添い、彼女を守り続けた。そして今度は自分の番だ。そもそも、散々守ってもらって今さらなかった事にはできない。
「分かりました。」
アンリエッタは覚悟を決めた。女としての初めてをサイトに捧げる決意をするのだった。
「決まりだ。」
アンリエッタはサイトの取引を承知した。
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