ハーメルン
ゼロの異端者 
プロローグ

一方その頃、監獄では・・・・・。

「あの男め!」

牢屋の中ではフーケが悪態をついていた。

「なんとかしてあの男に復讐してやりたいもんだけど・・・・これじゃもう無理かねぇ・・・」

ため息を吐く。ここから脱獄しようにも杖がない為、魔法も使えない。使えたとしてもあの宝物庫よりも強力な固定化がかかっているこの牢獄に自分の錬金が通用するはずもない。あきらめて今はもう寝よう。そう考え、横になる。するとコツコツと誰かが近づいてくる音が聞こえた。見回りの看守の足音にしては妙だ。現れたのは白い仮面をかぶった貴族の男だった。

「『土くれ』だな?お前の願い叶えてもいいぞ。」

「聞いてたのかい、もうすこしマシな趣味をもちな。」

男はそのまま手に持っていた物をフーケの前に差し出す。

「な!?それをどうして!?」

それは、学院で厳重に管理されている筈のマジックアイテム、『悪のオーブ』であった。

「我らに仕えて欲しい。マチルダ・オブ・サウスゴータ。」

「…っ!!」

かつて自分が捨てざるを得なかった名、それを耳にしフーケは言葉を失った。

「何が目的だい・・・」

「なに、革命を起こすのさ、アルビオンにな。その為には優秀なメイジが欲しい。協力して欲しいのだがどうかね? 『土くれ』よ。」

「随分ペラペラと喋るんだね? 私が断らない理由でもあるのかい?」

「もし断ったら―――」

「分かってるわよ、どうせ殺すんでしょ?」

フーケが割って答える。仮面ごしではあるが、恐らく笑ったであろうと感じた。

「さぁ、どうする?」

「乗ったわ、あの男に復讐してやる!…っと、その前に、その組織の名前を教えてくれないかい?」

フーケの問いに白仮面の男は鍵を開けながら答えた。

「レコン・キスタ」

『悪のオーブ』はまるで意思があるように光った。






















明朝。グリフォンと馬が一頭ずつ魔法学院を立つ。馬の背に乗るのは、ギーシュ・ド・グラモン。先行するグリフォンの背に二人して跨っているのが、ゼロのルイズと、現グリフォン隊隊長のワルド子爵である。そして、出発する一行を見つめる一つの影。学院長室の窓からアンリエッタが祈りながら見送っていた。

「彼女たちに、加護をお与え下さい。始祖ブリミルよ・・・・」

あの後、一頻り泣いた後にルイズの部屋に行った。胸の内を全て吐き出して落ち着いたのか、部屋に入る頃には泣いた素振りなど微塵も見せなかったのはさすがと言える。結局、ルイズとギーシュがアルビオンに行く事になったのだが、やはり学生二人だけでは心もとない。それで、ふと、記憶の片隅から、花を摘んできてくれた若い貴族の名前が浮かんだ。その二つ名は『閃光』。風のスクウェアメイジで、その力量はアルビオンにもそうそういないと言われている程。ラ・ヴァリエール公爵領近くの領地を持つ、グリフォン隊隊長の名前。ただそれだけではなく、昔一度だけ、そのワルド子爵がルイズの婚約者だとルイズ本人の口から聞いたことがある。

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