3
その夜。
「・・・・・あら、あれは何かしら?」
ふと、空を見上げてみると、自身の部屋の窓の光に映るように人影が入っていくのが見える。
「泥棒・・・・・?」
遠目に見てもフードをすっぽり被って全身を隠すようにしているのだから、ここの兵士ではない事は一目で分かる。警備員を呼んでもいいのだが、どうにもその人影が気になって落ち着かない。もっとも、落ち着かない一番の理由は、一人では抱えきれない程の悩みを持っているからだが。とにかく、こうしてはいられない。そして急いで走り出す、そして人影が入っていった自分の部屋に足を踏み入れる。
バタン!
ザッ!
「あ、あなたは!?」
いきなり扉が閉まる。そしてサイトは少女の口元を押さえた。反射的に悲鳴を上げようとした少女だったが、それは苦痛の喘ぎ声に取って代わられた。杖を持つ少女の手首が、サイトによって鷲掴みにされたのだ。ギリギリと万力のような力で締め付けられて、少女は杖を取り落としてしまう。それを足で部屋の隅へ蹴り飛ばし、サイトは更に少女の足を払う。
「きゃっ!?」
強烈な足払いが炸裂し、少女の体が部屋の床へと転がり込んだ。少女が床へ叩き付けられると同時にサイトは少女の手足を縛る。ついでに少女の口を布で塞いだ。これで抵抗らしい抵抗もできまい。
「さてと、顔を見られたからには死んでもらうしかないわね。」
王女の手前、物騒な事を言うルクシャナ。
「んー!んー!」
アンリエッタは何かを訴えようとするが、布のせいで上手く喋れない。
コンコン
「姫様!どうかしましたか!?」
勢い良く扉がノックされる。どうやら物音を立てたせいで、兵士たちがやってきたようだ。
「おい、余計な事は言うなよ。」
サイトはナイフをアンリエッタの喉元に近づけ、彼女の口を解放する。
「な、何でもありません!」
扉の向こうにいた兵士たちを下がらせる。
「さてと・・・・・・・・・・ん?」
ルクシャナは机の上に紙切れがのっているのを見つけた。
「これは・・・・?」
「うううううううぅっ! ううーっ、ううううううううううっ!」
さっきにもまして、アンリエッタは激しくうめいた。しかし、口をふさいでいる布はびくともせず、大きな声にはならない。
(恋文?)
悪いとは思いつつルクシャナはじっくりと読みこんだ。
「なんだ、それ?」
思わずサイトが覗き込もうとするが、
「パチン!」
ルクシャナに制される。流石の彼女も男に他人の恋文を見せるほど、性格は腐っていない。
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