プロローグ
「トリステイン魔法学園?」
アンリエッタはサイトとルクシャナに告げた。何でもトリステイン魔法学院という場所で祭りが行われるとのこと。学院の生徒達は、自身の使い魔にそれぞれに芸を競わせ、その優秀さを皆に示す。また夜には『フリッグの舞踏会』と呼ばれるダンスパーティーも開かれ、生徒たちはこの年に一度の祭りで恋に娯楽にと興じるのだ。その祭りにアンリエッタはサイトとルクシャナを招待するとのこと。
「へぇ、蛮人ってそんなことしてるんだ。」
「くだらねぇな。」
ルクシャナとは正反対にサイトは興味なしという顔をする。
「それと、お二人に会わせたい人がいるのです。」
アンリエッタは、ニコリと笑った。
数日後、アンリエッタ姫が魔法学院に到着した。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな~~~り~~~ッ!」
生徒だけでなく一部の教師からも歓声が上がり、それに応えてアンリエッタが手を振った。王族が持つ気品、優雅さ溢れる仕草である。
「あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃないの。そう思わない?」
赤髪の生徒が、つまらなさそうに眉を顰めた。
「興味ない・・・・・。」
水色髪の生徒が興味なさげに本に視線を移す。
「姫様!姫様!」
桃色髪の生徒は目を輝かせ、興奮する。そして見ていたのは生徒や教師だけではなく・・・・・・
「あれが、トリステイン王国王女、アンリエッタ・・・・・・・なるほど、確かに面影はあるな。」
老け顔の男はアンリエッタを観察する。
「似てない、所詮は花よ。」
ポニーテールの女は不満げな顔をする。
「早く捕まえて、料理しちゃおうぜ!」
大柄の男は目を光らせる。
「捕獲は部下たちに任せるとしょう。」
小柄男は小さく呟く。
そして、その日の夜・・・・・。食事も終えて後は寝るだけ、という頃合である。自室でくつろいでいた桃色の少女であったが、不意に聞こえたノックの音に現実に引き戻される。
「む?」
初めに長く二回、続けて短いノックが三回。立ち上がったルイズがドアを開けると、そこに立っていたのは黒いローブにフードをすっぽりと被ったアンリエッタだった。アンリエッタは注意深く周囲を伺ってから素早く部屋の中に入ると、後ろ手でドアを閉めた。
「・・・・あなたは?」
少女の声に、黒ずくめの少女は口元に指を立てる。静かにしろと言いたいらしい。こんな夜更けに突然押し掛けてきて、なんて図々しいと少女は眉を顰めた。挙げ句に命令するとは。過大なストレスに苛まれている自分の貴重な平穏な時間を奪った罪は重い。心の底で徐々に敵意を抱き始めている少女をよそに、 アンリエッタは、真っ黒なマントの隙間から、杖を取り出した。―――杖を抜くという相手の動作を、暗殺者の敵性行動とみなした少女の行動は迅速だった。
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