みんなの責任が俺の責任
廃墟と化したスーパーへと俺たちは避難する。
いよいよ敵戦力と直接対決になりそうだな。
ここからが役者藤宮天の腕の見せ所になるだろう、もう既に休ませて欲しいくらいに働いたが、失敗したら千束にどんな目に遭わされるか。
想像しただけで体が震える。
「――はい、そのスーパーに移動しています。三人とも目立った怪我はありません」
『わかった。気をつけて行動してくれ』
たきなが現状報告を終えて、こちらを見る。
その緊張した面持ちは、危機的状況への感情だけではない。
前回の護衛で失敗した事がかなり効いている。
危険度で言えば前回と同じかもしれない。
つまりは、再演だ。
ここで失敗を挽回せんという熱意があるのだ。
く、そう思うとお腹が痛くなってきた。
この子の任務、これから失敗するんだよね……!
でも、作戦は作戦だ。
千束も恐らく悲しむだろう。
あ……やっべ、これ正体明かした時の反応が途轍もなく怖くなってきた。
骨一本で終わるか分からないレベルの仕打ち来そう。
よし……リコリコ早く辞めよ。
「ここから敵を撒くため裏口に向かいます」
『包囲されてるんじゃないか?』
「最大予測員数は十人、スーパーを包囲するにしても接敵すれば一人か二人です。集団で襲われるよりも、少数で撃破しながら進めます」
『なるほど』
「前は私で。たきなは後ろお願い」
おお、さすがは元DA本部のセカンドリコリス。
素直に感心させられた。
何処かの脳筋ファーストリコリスとは違うな。
「じゃ、付いてきて下さい」
千束が低姿勢で先行して行く。
俺もそれに倣って頭を下げながら進み出した。
後ろのたきなは『本体』の入ったスーツケースを守りながら、俺の後を追……ん、足音が止まった?
振り返ると―――。
たきなside
ウォールナットの背後に追従しようとした瞬間、空の商品棚五列を挟んだ物陰から武装した男二名が現れた。
彼らが手にしている短機関銃に背筋が凍る。
まずい――!
私は直近の物陰……スーツケースの陰に身を伏せた。
直後、火線の雨が私の傍を過ぎていく。
静寂に包まれていた屋内が銃声に震えた。
「三人発見!銃を持ってる!」
男たちの攻勢が続く。
得物にかなりの差があるが問題ない。
射撃の腕なら誰よりも自信がある。
殺到する銃弾、でも無限ではない。
敵が再装填に要する時間――そこに生じる空白に、私はスーツケースから体を出して反撃すれば良い。
敵の位置は把握している。
とにかく、撃つだけだ。
「―――ぃよいしょっ!」
「ぐ、がはぁっ!?」
その間、千束さんが動いた。
軽快に商品棚を足場に飛び上がり、一人を銃撃する。
三発着弾し、苦しげな声が上げられた。
音からして相変わらずの非殺傷弾。
でも、ちらりと見えた相手は防弾チョッキを装備している。
それでは致命打にならない。
敵の銃撃が止んだ。
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