ハーメルン
帝国兵となってしまった。


 疲れていたのか予定より寝すぎてしまった。荷台から顔を出すと一応の申し訳程度の地図と合わせる。

 あと、西側へ200キロ程度でフランソワだ。

 「なんだよ結構、簡単じゃないか。」
 フランソワに入ってしまいさえすれば、思想や警備がガバガバ国家フランソワは帝国や低地国家への舗装路だ。

 しかし、簡単だよなと思っていたが双眼鏡を覗くとあれは軍の車だ。反乱軍か政府軍か知らないが見つかってはまずいと飛び降りて、線路の脇の森へと入る。セラゴーセの前で降りたが、目指すは取り敢えずバイオハザードのおもしろサングラスおじさんと同じ名前ウェスカーだ。盆地を通り抜けることになるだろう。

 つまり、相手は盆地故に限られた平地を抑えればいい簡単なお仕事でこちらは山登りをしなくてはいけない羽目になりそうだ。ハイキングやソロキャンプぐらいならよく行っていたしブルベや五大都市マラソンだって前世でしていたがこんな泳ぎをなくしたトライアスロンぐらいの行かれた地獄に行かないといけないんだ?というかやっぱり、大陸打通はおかしい。

 どこかで自転車かバイクか車を調達しないとローマ帝国だって馬に乗っていたんだからもはや劣化だろ。中世ヨーロッパへようこそだよ!というか本当に一人だけ世界大戦を味わってる気分になる。4時間は走ったり飛んだりをしていると川沿いにでた。川沿いはやはり道があり、人々は水辺とともに発展するのだなと思いながらも少し良くなった。

 ちょうどそこに馬車が通りかかる。定期便だろう。手を上げて乗せてもらうと前金だと金を渡す。歩いてばっかりいてはバテてしまう。体力の予備タンクは残しておくべきだ。プロとアマチュアの違いはアマチュアは体力をすべて使ってしまうがプロは余力を30%ぐらい残して戦う。これが競馬だと末脚、格闘技だとスパート、軍だと予備軍。体力があったほうが柔軟で多様な選択肢を取れる。最初から最後まで決戦思想はすぐにバテてしまいグダグタの結果になるのだ。

 乗り込むと乗客は老人のみでピッタリと撫でつけた白髪のオールバックとワイシャツに仕立ての良さそうな黒いズボンと麦わら帽子を被っている。

 「あんた。旅行者かい?珍しいねこの時期に旅人とは。夏場なんて誰が来てもつまらんだろうよ、この国。あの政権になってからガスコーにしてもカルターニアにしても、あのガリニアにしてもだ。政権は自治を餌に懐柔するが祭りや民族的なことはやめろとか言う。家畜にして代を重ねて全部をイスパニアにしたいんだろうよ。一体、それをして反発が来たなら何人の人が死ぬか。フランソワの革命を知れば恐ろしいと中央様もわかるはずなんだけどねぇ。」
 老人はそう言うと聖句を唱えて最後に「母なるイスパニア!」というとワインのボトルをラッパ飲みして寝てしまった。

 というか老人をよく見ると黒玉で出来た十字を下げて、割りと質の良いシャツを着ている。これが今の政権に資産没収された聖職者か一部貴族の末路なんだろう。

 あの全部の話を終える前に見せた目、あれは燃えるような情熱を秘めた目だった。ゆえあれば立ち上がるのだろう眼の前の老人も。ならば火種はどこにだってある。国が没収を連打するからこうなるのだ。

 馬車の外を幌の隙間から覗くとまさにきれいな真新しい四角に区画整理された畑の数々。それを見たときにゾッとした。

 日本ですら変形した田畑が多いのにこの四角四角した畑は所有者が変わったのを示す。それが続いているのだ。何人の農民や地主や教会の土地を奪ったらこんなにきれいになるんだろうか?

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