まさにここは鬼の哭く国イスパニアなのだろう。そして、ここには世紀末救世主伝説などは存在しない。世紀末内戦か世紀末代理戦争が関の山だろう。やりすぎたのだ。真面目にナタを振りすぎて返り血で歴史書をかけるくらいやってしまった。なのに中途半端に優しくするからこうなる。しかし、これ以上やるのならば、ロマノフスキーの轍を列強は踏まないだろう。しかもこのイスパニア共同体の場所は大西洋から来る旧大陸の橋頭保にして、南方大陸への入り口で、アジアから地中海へ向かう運河への最終拠点であり、世界の要衝のカナリア諸島や地中海にどこでも軍艦を向けれるバレアスなどもある。
地理的に見たときにイスパニア共同体は旧大陸から山で遮断された南方大陸の出島ではあるのだがそれ故に価値が高い。イスパニア共同体の持つ南方大陸での領土もフランソワなどから見ても美味しい位置にある。ゆえあれば、列強が介入してくる地理的条件は揃っているのだ。眠れる獅子と評されたりもするがいざ殴り合いを始めたら眠ったままに安楽死する豚扱いも珍しくない。
それに完全な共和国がここで増えるのは帝国、連合王国、イルドアにしても面白くないのだ。それを見た過激派がいつ反乱を起こすかわからないからだ。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶまた未来は過去の延長線上にあると言われているが人はそれだけでなく、簡単に戦いを始める。故に止めなくてはならない。
俺が早めに伝えに行って、連合王国と帝国が異変に気がついて海上封鎖をすれば内乱どころではなくなり、やめるだろう。仲介者としてフランソワやイルドアも呼べば4カ国の列強による無理矢理の仲裁でイスパニア内部の利権や権益は吹き飛ぶが平和が手に入るだろう。もしかすれば列強はメンツのために投資をするかもしれない。それに復興のための需要で逆にこの閉塞感が漂うイスパニアも意識が変わるかも。
「全部、希望か。」
なぜパンドラの箱に希望が入っていたのかわかる気がした。そして、夜通し歩いた俺は再び寝た。しかし、ものだけは取られないように
「あんちゃん、起きろよ。最終だ。おい。」
目を覚ますとあの老人が俺を揺すっていた。
「すみません。悪いですね。ありがとうございます。」
というと老人はニカっと笑っていいさと返してきた。気持ちがいい老人だ。立ち上がると足が不自由な様で引きずっている。慌てて手を貸すと「これでお互い様かな。」と老人はより笑った。
「すまないね。政府の取り調べと反政府の奴らの取り調べでこうなったのさ。彼らは同じだよ。水面に映った化け物をお互いに殴り合うのさ。無意味なことにね。」
それ聞きながら老人が言うままに町の教会に連れて行くと町の名前を確認する。ここはウェスカーだ。かつては要塞都市だっただけはあり、城塞などが多数ある。それ故に前世では同じような地点にあった場所はスペイン内戦時代に激戦区の要塞として戦ったようだ。
となるとイスパニア内戦が始まればこの老人も巻き込まれるのだろうか?と思ってしまい、嫌な気分になった。外に出てタバコを吸う。紫煙が空に登り龍のように舞う。ドラゴンというより登りゆく龍のようだった。
覚悟を決めるしかないようだ。なぜ毎回内乱に惑わされるんだ?おかしいよな俺は、いや、これは俺が始めたのか?
わけがわからないままに走り続けるんだ。お前らの責任だよこれはでもやると決めた以上は背負って進むしかない。一度初めてやってしまったのは俺だから。ならばやるしかない。
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